マチェイ・スコルジャ新監督のもと、昨季9位からの巻き返しを誓う浦和レッズはアウェーでFC東京に0-2の完封負けを喫し、前年に続いて黒星スタートとなった。プレスの強度が落ちた後半に2失点を喫したものの、明るい材料も見えた。欠場濃厚と思われていた新キャプテンの酒井宏樹が、先発メンバーに名を連ねて圧巻のプレーでチームを鼓舞した。

上写真=ケガ明けながらキャプテンとして熱いプレーを披露した酒井宏樹(写真◎J.LEAGUE)

視察した森保監督も信頼「自分の良さを出していた」

 背番号2の背中は、頼もしかった。太い腕に浦和の赤いキャプテンマークを巻き、先頭に立って堂々と入場してきた。キックオフ前、円陣の中では酒井宏樹の声が響く。

気合の入った主将は、立ち上がりからエンジン全開だった。前半は持ち前の馬力あふれるプレーで、右サイドで圧倒的な存在感を放った。16分に右サイドのオープンスペースに走り込んでパスを受けると、そのままエリア内に侵入。折り返したボールは相手GKにキャッチされたが、縦への突破は迫力十分である。会場を沸かせたのは、23分のパワフルなソルジャーチャージ。自陣で体格のいいブラジル人のアダイウトンを弾き飛ばし、そのままドリブルで敵陣まで駆け上がった。

後半は苦戦を強いられて、2失点を喫したが、随所で見せた主将の熱いプレーは目を見張るばかり。今年4月で33歳を迎えるが、日本屈指の右サイドバックに衰えは一切見えない。味の素スタジアムで視察した日本代表の森保一監督も、昨年のカタールワールドカップに出場したベテランには信頼を寄せている。

「ケガ明けでコンディション的に100パーセントではなかったかもしれませんが、チームを支えながら自分の良さを出していたと思います」

 リーグ開幕の直前までケガで出場が危ぶまれていたとは、とても思えなかった。この日はぶっつけ本番。「チーム練習はまったくしていなかった」。ただ、ピッチに入った時点でコンディションの良し悪しは関係ない。言い訳せずに全力でプレーするのが酒井の信条。常日頃から本人が言い続けていることである。キャプテンになっても、試合に臨む姿勢は変わらないという。「勝つことだけにすべての力を注ぐ」。ケガの影響についても、多くを語ることはなかった。

「(開幕に)間に合ったことがすべて。前半はみんながファイトする姿勢を見せることができたと思います。チームとして、手応えはありました。ただ、結果が伴わなかったことはしっかり反省したい」

 1失点目のオウンゴールに至った原因も冷静に分析し、小さなミスが続いたことを悔いた。 苦い表情を見せたのは、敗戦後に大きな拍手を送ってくれたファン・サポーターのことを頭に浮かべたときだ。

「帰るときに笑顔にさせられなくて、悔しいです。僕ら選手たちは、責任を持って反省します。ファン・サポーターを巻き込んで、進んでいきたい」

 2月25日の2節は、前年のJ1王者が待つ厳しいアウェーゲームが控えている。キャプテンは横浜F・マリノス戦に向けて、すぐに前を向いた。

「僕らは(ファン・サポーターに)与えないといけないものがたくさんある。早く勝ち点3をプレゼントしたいです」

 力強い言葉には、プロとしての矜持がにじんでいた。

取材◎杉園昌之


This article is a sponsored article by
''.