「我ながらうまくいきすぎて」
――今年のチームは鬼木達監督が「スピード」を掲げてスタートしました。その「スピード」が意味する感覚をチームとして合わせていくために、どんな働きかけをしてきましたか。
家長 僕たちはオニさんについていくだけなので、全員で意志を合わせていきました。僕が伝えることといえば本当にプレー中の些細なことだったり、こういうこともいいんじゃないかな、と提示するぐらい。あんまり大したことを、チームにしていないかもしれません。
――そういう感覚なんですね。でも、今年は本当に、ほかの選手たちが「アキさんの姿勢を見習いたい」と誰もが口をそろえていたんです。例を挙げると、最終節のあとに橘田健人選手が、家長選手は本当は足が痛いのに最後の最後まで体を張り続けているけれど、それは自分がやらなければいけない、と話していました。
家長 一番年上で試合に出させてもらっているので、ある意味で僕が一番言い訳できるのかもしれないですけど、逆に僕がしっかりやればプレッシャーが掛かるだろうし、みんなは言い訳できないでしょうね(笑)。そんなに周りのことを考えているわけではないけれど、結果的にそうなってくれたのであればうれしいです。
――そういう姿勢で素晴らしいプレーを披露し続けて、12ものゴールを生み出しました。印象に残っているのはどれでしょう。
家長 1点目かもしれないですね。シーズン初めの1点目は大事だと思っていて、開幕2戦目で取ることができたのがよかったです。
――左から橘田選手がDFとGKの間を通したセンタリングに、逆サイドから入ってきて右足で合わせました。さりげなく打ったように見えて、技術的には一度GKの手前でボールをバウンドさせて高く跳ねるようにして、タイミングをずらしましたよね。
家長 なんとなく、ですけど、あれは狙っていましたね。
――ほかにはやはり、7月9日の第21節、ホームのガンバ大阪戦で決めたバイシクルシュートは美しかった。
家長 あれは本当に、我ながらうまくいきすぎて、自分でもびっくりしましたよ。
――ゴールを背にしてきれいに跳んで、利き足とは逆の右足できっちりインパクトして、と、ここまでももちろんハイレベルですが、驚いたのは、そのあともボールの行方を最後まで目で追い続けていることです。
家長 いま、めちゃくちゃすごいポイントを見てくれていると思いましたよ。オーバーヘッドしたことよりも、したあとでボールを見ていることが自分でもすごいなと思っているので。体の調子もよかったんだと思いますし、蹴ったあとに体勢は崩れていても顔がしっかりとボールに向いているのは、フィジカルの理論としてもとてもいいことだと思うんです。
――GKの東口順昭選手に当たって入っているのですが、止められると思いましたか。
家長 一瞬だったので、そのときはわからなかったですね。映像で見返したら止められそうだったけれど、あんなに強いシュートがいっているとは知らなくて。あれだけ球威があったのは自分でも驚きました。