9月3日の明治安田生命J1リーグ第28節で、サンフレッチェ広島と清水エスパルスが対戦。一進一退の攻防から後半に広島が退場者を出して数的不利に陥ったが、粘り強く守った末にMF川村拓夢が2得点を奪い、完封勝利で今季初の5連勝、暫定首位に立った。

上写真=83分に先制点を決めた川村がエンブレムに手を当てながらベンチにダッシュ!(写真◎J.LEAGUE)

■2022年9月3日 J1リーグ第28節(@Eスタ:観衆11,437人)
広島 2-0 清水
得点者=(広)川村拓夢2

・広島メンバー◎GK大迫敬介、DF塩谷司、荒木隼人、佐々木翔、MF茶島雄介(90+9分:柴﨑晃誠)、野津田岳人、松本泰志(90+9分:青山敏弘)、柏好文、森島司(66分:住吉ジェラニレショーン)、ナッシム・ベン・カリファ(75分:川村拓夢)、FWピエロス・ソティリウ(75分:ドウグラス・ヴィエイラ)

・清水メンバー◎GK権田修一、DF原輝綺(87分:後藤優介)、立田悠悟、鈴木義宜、片山瑛一(82分:山原怜音)、MF白崎凌兵、松岡大起、ヤゴ・ピカチュウ(75分:鈴木唯人)、乾貴士、FWカルリーニョス・ジュニオ(82分:北川航也)、チアゴ・サンタナ

10人になってから終盤に2得点

 広島市は午前中から蒸し暑く、キックオフ約1時間半前には激しく雨が降る時間帯もあったが、試合が始まる頃には小降りに。この日からエディオンスタジアム広島には声出し応援エリアが設置され、2020年2月のJ1開幕戦以来、約2年半ぶりにファン・サポーターの声が響く中での試合となった。

 立ち上がりは清水がうまくボールを動かし、広島の前線からのプレッシャーを回避してチャンスを作った。4分にはDF片山の左からのセンタリングをMF白崎が左足で合わせたが、広島の守備網に当たってCKに。6分にはFWチアゴ・サンタナが左サイドにパス、フリーになっていたMF乾がダイレクトでファーサイドを狙ったものの、右に外れて決まらない。

 その後は広島がボールを持つ時間が増え、清水もカウンターからゴールに迫るなど主導権争いが続く。広島は両サイドから攻略を狙い、38分にMFベン・カリファのセンタリングをMF森島がヘッドで合わせるも、懸命に体を寄せて競り合った清水MF松岡に当たってCKに。41分にはMF柏のセンタリングをベン・カリファが頭で合わせたが右に外れ、そのままスコアレスで前半を終えた。

 後半も立ち上がりに決定機を作ったのは清水。48分、敵陣でのボール奪取から鮮やかなカウンターで攻め込み、MFヤゴ・ピカチュウのパスからフリーとなったFWカルリーニョス・ジュニオが左足で狙ったが、距離を詰めた広島GK大迫が左足でセーブした。

 なかなかスコアが動かない一戦は、59分に大きく動いた。清水がカウンターで攻め込み、右サイドで乾が抜け出そうとしたところで、追ってきた広島DF塩谷が体をぶつけ、ファウルの判定。塩谷には警告が与えられ、清水のFKで試合が再開しようとしていた。

 しかし、ここでVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入。福島孝一郎主審によるオンフィールドレビューが行なわれた結果、塩谷の警告がDOGSO(決定的な得点の機会の阻止)による退場に変わった(退場時間は65分)。

 10人となった広島は直後から選手交代で守備陣形を整え、計3人を代えて5-3-1で失点を防ぐ戦いにシフト。ボールを支配しながらも、なかなか攻め崩せない清水は75分に1人を代えたのに続き、82分には2人を同時に投入してゴールをこじ開けにかかった。

 だが、先にネットを揺らしたのは広島だった。83分、FWドウグラス・ヴィエイラが前線で体を張ったところにMF川村が絡んでボールを奪い、左サイドの柏へ。エリア内左サイドに走り込んで柏のパスを引き出した川村が、左足で引っかけるように合わせてファーサイドへ流し込んだ。

 先制された清水は懸命の反撃に転じたが、広島は懸命に耐え、8分と表示された後半アディショナルタイムの90+5分に追加点。左サイドでスローインのこぼれ球を拾った川村が、「ゴールキーパーが出ていたので、自分のロングシュート…じゃなくて、ロングパスのスピードと精度なら、絶対に入ると思った」という判断から、ゴールまで約65メートルの距離から左足を一閃。自陣から正確にゴールの枠を捉えたボールが、ワンバウンドでネットを揺らしてダメ押し点となった。

 数的不利をはね返して2得点を奪い、完封勝利を飾った広島は今季初の5連勝。消化試合数は多い状況ながら、川崎フロンターレと横浜F・マリノスを抜いて暫定首位に立った。救世主となった川村は、驚異的なロングシュートを沈めた2点目について「高校時代とか、ああいうゴールが多かった。自分としては、そんなにすごくない。1点目の方がすごいと思う」と笑顔で振り返っていた。

現地取材◎石倉利英 写真◎J.LEAGUE


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