8月31日の明治安田生命J1リーグ第20節延期分で、川崎フロンターレがサガン鳥栖を4-0で下した90分。3点目はマルシーニョが繰り出したきれいなループシュートによるものだった。チーム4連勝の中心には、マルシーニョの「正確性」がある。

上写真=マルシーニョがチームトップの9ゴール!(写真◎J.LEAGUE)

「練習でやっておかないと」

 またもや「右足アウトサイドキック」が輝いた。川崎フロンターレは8月31日のJ1第20節延期分でサガン鳥栖に4-0と大勝したが、勝利を確実なものにする3点目はマルシーニョがループシュートで決めた。

 56分、鳥栖のFKを家長昭博が弾き、こぼれ球を脇坂泰斗がハーフウェーラインあたりに絶妙に落とすハイボールを送った。すかさず反応したマルシーニョは胸トラップで押し出して前に運ぶと、飛び出してきたGK朴一圭の動きを見極めて頭上を抜いた。

「プレーとしてはいつも通りでした」と冷静に解説する。

「セットプレーからでしたけど、常日頃からセットプレーではセカンドボールを大事にしようと練習していて、クリアしたところでカウンターの準備はしていました。ヤス(脇坂)らしいパスを送ってくれましたね。キーパーが前に出てくるか戻るか躊躇していた動きが見えたので、彼の上を抜くループシュートで決められてうれしかったです」

 練習通り、かつGKの動きを見きったファインショット。このキックが「右足アウトサイド」によるものだった。マルシーニョいわく、小指から数えて「3本指のキック」である。

 7月9日のJ1第21節、ガンバ大阪戦でレアンドロ・ダミアンの先制点を導いたパスが7月の月間ベストアシストに選ばれた。それも右足アウトサイドでのキックだった。これを祝したインタビューでは「右のアウトサイドでプレーするとかっこいいなと思うので、やっています(笑)。いつもではないけれど、たまにいいボールが飛ぶので試しながらやっています」と話していた。そのときと同じように、秘密を明かす。

「ボールのポジション次第ですね。自分の右足にあるときには右足の3本指で蹴ることができないけれど、ボールが左側にあって右足で蹴るときにはアウトサイドの3本指で蹴ることが多いんです。今回も左側にあったので、うまく右足のアウトサイドで蹴ることができました」

 ボールが跳ね上がったその瞬間を見計らって「3本指」で蹴り出すテクニックは、正確だった。

 正確と言えば、もう1本、ていねいに流し込んだシュートがある。前半終了間際の45分、とても美しいパスワークからだった。GKチョン・ソンリョンが右サイドへ蹴り出し、ジョアン・シミッチがヘッドでフリック、家長昭博、山根視来とパス交換してから山根が左寄りの橘田健人へ、今度は車屋紳太郎、脇坂泰斗とつないでから、中央に入り込んでいた山根がもらって左裏へと短いスルーパスを送った。マルシーニョが走り込み、GK朴一圭との1対1でゴール右に流し込んだ。

 しかし、マルシーニョが少し早く飛び出してオフサイドに。ゴールは認められなかったものの、GKの動きをよく見たシュートは正確だった。

「前半の終了間際に自分のゴールがオフサイドで残念ながら取り消されてしまいましたが、後半にまたチャンスが来てうまく仕留めることができてよかった」

 公式記録ではシュートは2本だが、このオフサイドのシーンも加えれば3本中2本をゴールに送り込んだことになる。正確性、というところに好調の理由の一つがありそうだ。

「練習の中でどれだけしっかりしたシュートが打てるかが重要です。1試合でシュートチャンスが1、2本しかないときもあるので、少ないチャンスの中でどれだけ決められるか、練習でやっておかないと結果としてつながりません」

 練習で蹴り込んでいる自信がそう言わせるのだろう。これでチームトップの9ゴールだ。加えて、負傷で戦列を離れていた選手が復帰後初ゴールを決めたことも喜んだ。

「ケガから戻ってきた知念(慶)も(大島)僚太がゴールという結果を出せたことが、チームの力になっています。プラスの材料しかないと思っています」

 暫定首位に立ったが、試合数は横浜F・マリノスより1試合多い。だが、視界は良好。「現状に満足せずに、目標の3連覇にたどり着くまで一戦一戦、戦いたい」と引き締めるマルシーニョの好調が、その大きな要因であることは間違いない。


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