川崎フロンターレが劇的な幕切れで、横浜F・マリノスとの「頂上決戦」を制した。8月7日、明治安田生命J1リーグ第24節で最後の最後に決めたのが、ジェジエウ。負傷から復帰してから初めてのホームでの試合で、見事に「等々力劇場」の主役を演じた。

上写真=ジェジエウはケガから復帰後の初めてのホームゲームで、ファン・サポーターに最高のプレゼントを贈った(写真◎J.LEAGUE)

■2022年8月7日 J1リーグ第24節(等々力/20,704人)
川崎F 2-1 横浜FM
得点者:(川)レアンドロ・ダミアン、ジェジエウ
    (横)仲川輝人

「人生をかけて最後まで」

 今度はジェジエウで「等々力劇場」だ。

 1-1のまま終わろうかという90+9分、家長昭博の右からのクロスをジェジエウがジャンプ一番、高々と舞い上がって、全身のパワーをヘッドでボールに伝えた。猛スピードを得たボールは左ポストに当たっても勢いを失わずに、ゴールネットを力強く揺らした。

「全身がつっていた状態でした」とジェジエウは明かすが、それであのジャンプとあのヘッドだ。家長昭博は「顔を上げたらジェジエウが相手と1対1になっていて、いいボールを送ればチャンスかなと思って迷わず上げました」と、ていねいにボールを届けた。「つっていたのは僕からしたら関係ない」と笑いを誘ったが、そこに立っている以上、信頼して送り届けるだけだ。

 ジェジエウがそこにいたのも、勝負の綾である。ハーフタイムを除き3度の交代機会をすべて使い、その最後に90分にレアンドロ・ダミアンに代わってDF山村和也を起用、高さを生かして最前線に入れていた。しかし、その後にジェジエウが足をつったから、失点のリスクを回避するために山村をセンターバックに下げて、代わりにジェジエウを最前線に送っていたのだ。

 ジェジエウも足を動かした。家長が持って戻りながら左足の前にボールを置いた瞬間に、少しファーにふくらんでマークについていた岩田智輝の視界から消えて、ボールを呼び込むスペースを自分の前に作っている。

 昨年11月に左ヒザ前十字靭帯損傷、左ヒザ内側側副靭帯損傷の重傷を負ってから、等々力陸上競技場では初めてのゲームになった。ホームに帰ってきて、ものすごい音量の拍手に背中を押された。

「大ケガをしたあとに7カ月も8カ月もリハビリに励んできて、それが今日こうやって自分に力を与えてくれました。ここにいるみなさん、川崎フロンターレのサポーターという家族が一つになって戦えたと思います」

 もちろん、本職の守備でも何度も横浜FMの質の高い攻撃を止めていって、失点を1に抑えていた。このドラマティックな勝利によって、2試合消化が少ない状態で、横浜FMとの勝ち点差を8に縮めた。

「今日からだと思います。ここからタイトルに向けて走り始める試合になりました。人生をかけて最後まで戦い続けたい」

 サポーターに「みんなで一緒に戦いましょう」と呼びかけたヒーローが、優勝をあきらめるわけがない。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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