浦和レッズが川崎フロンターレに3-1で快勝した、7月30日の明治安田生命J1リーグ第23節。序盤で1得点1アシストと結果を出して勝利へと力強く導いたのが、伊藤敦樹だ。ゴールに近いところに「いる」ことの重要性を示したその存在感が頼もしい。

上写真=伊藤敦樹がアシストしてくれたモーベルグと喜び合う。1ゴール1アシストで勝利へと力強く引っ張った(写真◎J.LEAGUE)

■2022年7月30日 J1リーグ第23節(埼玉/35,451人)
浦和 3-1 川崎F
得点者:(浦)伊藤敦樹、松尾佑介、岩尾憲
    (川)家長昭博

「憲くんが残ってくれるという安心感」

 前に出る。

 浦和レッズがJ1第23節で川崎フロンターレを下した一戦は、序盤の2ゴールが大きく物を言った。そのどちらにも絡んだのが、センターハーフの伊藤敦樹。持ち味を存分に発揮して、先制ゴールを決めれば、追加点もアシストしてみせた。

 開始わずか7分の先制点は、ヘッドで押し込んだもの。江坂任が右サイドに展開して、ダヴィド・モーベルグに渡った。

「1点目はデヴィ(モーベルグ)が持ったときに仕掛けるのはわかっていて、縦に行ってクロスを上げてくれると信じていました。センターバックが割れていて空いていたので入ったら、本当にいいボールが来たので、あとは触るだけでした」

 左利きのモーベルグに対して川崎Fは橘田健人が左足を警戒して守り、サポートに入ったマルシーニョも左足を抑えにかかった。これでぽっかりと縦が空いたのだ。だから、右足で上げてくることは予測できていた。川崎Fのセンターバックはニアに谷口彰悟が構え、ジェジエウはファーへ。まさに「割れて」いるポジショニングだった。GKチョン・ソンリョンと谷口の間を抜けてきたクロスにヘッドで合わせ、がら空きのゴールに送り込んだ。

 前へ、の意識は17分の2点目のアシストでも色濃く表れた。左サイドで作る間に、するすると中央にポジションを移す。関根貴大の斜めのパスを受けた松尾佑介がスリップするのだが、ちょうどすぐそばでサポートに入っていた。相手より先に反応して、ボールを少しだけ浮かせてタックルをかわすと、そのボールに松尾が右足を振って突き刺した。松尾は「僕の近くにいてくれたから生まれたゴール」と感謝した。2列目、3列目からいかに1トップに関わっていくか。その一つの解答になるようなアシストだ。

「ここ数試合は僕もあそこ(FW)の横のところまで上がれています。最初はワンツーを狙っていたけれど、(松尾が)ドリブルしてきて、(こぼれたところで)今度はシュートを打とうと思っていたのですが、相手が来ていたのでかわして打とうと思ったら、それがいい感じにアシストになりました」

 どちらもポジションを前に取ってフィニッシュゾーンに立ったことで、結果に結びつけている。そこにいることの重要性。

「前への意識はもともとありましたし、強みも出せると思っていました。攻撃時のポジションはボランチより一列前になっているので、出ていきやすいですね。攻撃のバリエーションが増えていて、それがゴールやアシストに結びついているので、いまはそのフィーリングがいい。続けていきたいですね」

 守備のときには中盤のセンターに入って4-4-2の3ラインを作り、コンパクトに整える。そこから攻撃に入れば、後ろは任せて高い位置に出ていって4-3-3のインサイドハーフのような立ち位置を取る。外に張り出すモーベルグや果敢に攻め上がる酒井宏樹、1トップの松尾やフリーポジションで相手を幻惑する江坂と関わり合いながら、フィニッシャーの役割を担っていく。ボランチというポジションの枠を飛び出したスケールの大きさが開花している。

「いまはいいバランスでできていると思います。自分が前に行くことが多いけれど、後ろに(岩尾)憲くんが残ってくれるという安心感があります。憲くんがバランスを取ってくれているので、思い切って前に行くことができています。いまは本当にいい関係ができていますし、憲くんだけではなくて、デヴィや宏樹くんとの右サイドの関係性も、ここ数試合で距離感を含めていい感じになっていると思います」

 もちろん、長いストライドを生かした球際のバトルも、最終ラインからボールを引き出して攻撃のテンポを生み出す仕事もお手の物。ここからは、ルヴァンカップ準々決勝やAFCチャンピオンズリーグのラウンド16とタイトルに直結する8月の連戦が待っている。この日の試合では「前半は飛ばしすぎて、後半は足が止まって交代した」と悔やんだものの、ハイスペックを備えたオールラウンダーは、さらに輝かしい存在になってくれそうだ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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