関根貴大は静かな闘志を秘めてピッチに入った。8月22日、AFCチャンピオンズリーグの東地区準々決勝、浦和レッズ対パトゥム・ユナイテッド(タイ)戦。ポジションを失うかもしれない危機感とサポーターの大声援が足を動かして、関根はゴールが取り消されながらも切り替えて、先制アシストを決めてみせた。

上写真=関根貴大は自らがアシストしたモーベルグの先制ゴールを満面の笑みで祝福!(写真◎AFC)

■2022年8月22日 ACL準々決勝(埼玉/16,210人)
浦和(日本)4-0 パトゥム・ユナイテッド(タイ)
得点者:(浦)ダヴィド・モーベルグ、岩波拓也、小泉佳穂、明本考浩

「たまにしか決めないんで」

 関根貴大は特別な思いでピッチに入っていった。「ベンチ外が続いた時期もあったし、今日はチャンスの試合だと」自分を焚き付けた。

 8月10日のルヴァンカップ準々決勝第2戦の名古屋グランパス戦、13日のJ1第25節ジュビロ磐田戦と続けて試合のメンバーに入れず、ACLラウンド16のジョホール・ダルル・タクジム戦もベンチからのスタート。公式戦4試合ぶりの先発となったゲームは、幻のゴールから始まった。

 25分、関根が左からカットインして右足で低い弾道のシュート、これが左ポストをたたいて見事にゴールに飛び込んだ。仲間からの祝福を受けたあと、ボールのコース上に松尾佑介がいて、オフサイドポジションでプレーに関与したとされて取り消された。

「たまにしか決めないんで、ゴールにしてくれよと思ったんですけど」と笑わせたが、開始50秒の松尾のゴールも取り消されていて、連続で得点が認められない不運なスタートになった。それでも「ボールを追えていなかったのでどうなったかわからなくて、ああ、取り消されたのか、と」だけ思って淡々。「気持ちを切らさずにやれたのが良かったと思います」と、切り替えは早かった。

 自らの力でそれを証明したのが、32分のことだ。幻のゴールシーンと同じように、左から中央にドリブルで突き進んで中央にラストパスを送ると、松尾がスルーして、ダヴィド・モーベルグが左足を力強く振って、強烈なシュートを突き刺した。

「無理な体勢でも運べるときは運ぼうと意識したので、それがゴールにつながってよかったです」

 左でタッチラインを背にしてボールをもらうと、寄せてきた1人目に触られながらもはがして力強く前に出てからそのまま中へ。後ろから迫る相手を背中でブロックして、押された力を推進力に変えてさらに前進すると、詰めてきた2人の間をするりと抜けたところでパスを送った。

「松尾と話していて、中に入ったら松尾に当ててから潜るということはお互いに意識していました。そこで彼が判断してスルーしたのが素晴らしかったなと思います」

 ワイドアタッカーがカットインしてから松尾を経由して、ゴール前の危険なエリアに割って入るのは打ち合わせ通り。逆サイドからモーベルグも呼応して、3人で仕上げてみせた。この先制点で「幻の2ゴール」の嫌な流れを払拭できた。


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