上写真=登里享平がおよそ半年ぶりにピッチに帰ってきた!(写真◎J.LEAGUE)
■2022年7月9日 J1リーグ第21節(等々力/18,466人)
川崎F 4-0 G大阪
得点者:(川)レアンドロ・ダミアン、マルシーニョ、脇坂泰斗、家長昭博
「コントロールしたり微調整したり」
そのとき、等々力陸上競技場がひときわ大きくて心のこもった拍手に包まれた。登里享平が帰ってきた。
「早く試合に出たいと思っていて、スタンドから温かい拍手で迎えてくれたので、期待に応えたかったです」
3月2日の浦和レッズ戦で負傷してからおよそ半年。2度に渡って右大腿二頭筋の肉離れに見舞われて苦しんだ。ようやくJ1第21節のガンバ大阪戦でベンチ入りすると、仲間たちが前半だけで4得点を挙げた。まるで、できるだけ大差をつけて、余裕を持って登里をピッチに送り込もうとしているようでもあった。78分、交代する山根視来から熱い抱擁を受けて、ピッチに飛び出していった。
「視来は『登里軍団』の一人なので、リハビリ中にはよく話したり発破をかけてくれたりしていました。視来の活躍もずっと刺激になっていました」と登里が感謝すれば、山根も「ノボリくんはムードメーカーだし、僕のお手本となるプレーをしてくれる選手。ずっと右と左で組んでいたので、帰ってきてうれしかった」と声をはずませる。
プレー時間は12分とアディショナルタイム。「久しぶりの試合で、まだまだだなという部分もありましたけど、戻ってくることができたのでここからしっかり貢献できればと思います」と試運転を振り返る。不在の間にポジションを奪ったルーキーの佐々木旭のプレーを、「刺激になります」と見つめながら、同時にベテランらしく、チーム全体を俯瞰していた。
「結果が出なくて、ACLも天皇杯も敗退してしまいました。他の試合でも上から見ていて感じるものもありましたし、ピッチの中でそれを落とし込んでコントロールしたり微調整したりできるところはあると思っています。もっともっと突き詰めてやっていきたい」
チームの一体感を引き出す気遣いと、人一倍サッカーに熱い心の持ち主だから、J1で3位に甘んじている現状に満足していない。大事なのは「自分たちから崩れないこと」と言い切る。
「自分が戻ってきたことで、劇的に変わる…いや、変えるぐらいの思いでモチベーションを上げて、自分にもプレッシャーをかけながらやっていかなければいけないと思っています」
夏からの逆襲に、その力は欠かせない。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE