上写真=前半30分から出場し、攻守両面で勝利に貢献した藤田譲瑠チマ(写真◎J.LEAGUE)
文◎国吉好弘
9日からのU-21代表キャンプに参加
タフな戦いが続いたACLのグループステージを終えて、帰国した横浜F・マリノスが、ホーム日産スタジアムで名古屋グランパスと対戦した。1-1で迎えた終盤の87分にアンデルソン・ロペスが決勝ゴールを決めて2-1の逆転勝利をつかんだ。
決勝ゴールは左サイドでボールを受けた西村拓真がペナルティーエリアへ入ってきた藤田譲瑠チマに速いパスを当て、そのリターンをダイレクトでシュート、名古屋のGKランゲラックが弾いたところをアンデルソン・ロペスが蹴り込んだもの。
西村のゴールを目指す感覚とシュート技術も見事だったが、それをお膳立てした藤田の動きも素晴らしかった。縦パスを受けた仲川輝人が左から中へ持ち込むと、中盤から上がってきた藤田がサポート。左の西村へパスを出し、さらにボックス内に入り込んで受け手となり、西村に正確で柔らかいリターンパスを戻した。
「(ボールを)『出した後は動く』といつも監督やスタッフに言われている」という動きと、自らが「パスの質やアシストだけでなく、アシストの一つ前のプレーにもこだわっている」というプレーがまさに実を結んだ。
この試合で藤田はスタメンではなく、まだ前半の30分に岩田智輝が負傷して、急きょ出番が回ってきた。出場時点ですでに1点のビハインドを負っていたが、中盤の中央でプレーする重要な役割を落ち着いてこなした。球際の激しい争いが繰り返される中でも、マッチアップする名古屋のレオ・シルバ、稲垣祥という経験豊富な相手に一歩も引かずに渡り合い、得点のシーンばかりでなく攻守に貢献した。
育成の名門である東京ヴェルディのアカデミーで育ち、ユース時代の2019年に2種登録でJ2にデビュー。翌年にはプロ契約を結び、昨季は徳島ヴォルティスへ移籍してプレーした。今季から横浜FMに加わっている。東京V所属の2020年、開幕直後からレギュラーの座をつかみ18歳とは思えないプレーを見せていたが、圧巻だったのは西が丘で行なわれた第31節のツエーゲン金沢戦だった。
1シーズン、プレーし続けて自信をつけたようで、中盤のアンカーを務めると、守備を助け、中盤の競り合いに勝ち、左右にパスを振り分けた上に縦パスも通した。さらにはゴール前にも進出してきわどいシュートを放ってみせた。ダイナミックな動き、反転の速さ、ボールを奪って次のプレーに移る速さ等、そのポテンシャルには舌を巻いた。
昨季徳島でJ1でのプレーではチームが苦しい戦いを強いられたことで、苦労も多かったようだが、その経験も経て横浜FMで、さらに成長していると感じさせる。この日のプレーやACLでも確認できた。ケヴィン・マスカット監督も「よく成長している。ACLでも素晴らしいプレーでさらに成長した」と認めていた。
これまで継続的に年代別代表でプレーし、明日9日から行われるUー21日本代表のキャンプにも参加する。6月1日からウズベキスタンで開催されるAFC・U-23アジアカップのメンバー入りも有力だ。ACLでの経験はここでも生きるはずで、チームの中心となることが期待される。その先に待っているのは、2024年のパリ五輪だ。