武藤雄樹がピッチに帰ってきた。負傷によりリハビリに励んできたが、4月29日の明治安田生命J1リーグ第10節のサガン鳥栖戦で後半からピッチに登場。たった10分でアシストを記録するなど、攻撃のスイッチ役になった。試合には1-4で敗れたが、背番号9の復帰がチームを変えていく。

上写真=武藤雄樹が今季初出場。登場から10分でいきなりアシストしてみせた(写真◎J.LEAGUE)

■2022年4月29日 J1リーグ第10節(三協F柏/5,114人)
柏 1-4 鳥栖
得点者:(柏)細谷真大
    (鳥)本田風智、田代雅也、福田晃斗、飯野七聖

「迷いなく自信を持ってピッチに」

「あれを決めれば、流れはもっともっと変わったはず…」

 悔やんだのが、60分のシーンだ。細谷真大が強引に中央を突き進んでから右足で強烈にシュート、GK朴一圭がたまらずはたき落とすように弾いたボールに、素早く突っ込んで右足で狙った。しかし、がら空きのゴールのその上へとボールが飛んでいき、ゴール裏の黄色いサポーターからは思わずため息が漏れた。

 武藤雄樹が帰ってきた。2月21日、右膝半月板損傷という重傷を負って全治まで2カ月と発表されていた。4月29日のJ1第10節サガン鳥栖戦で復帰した。

 55分には追撃のゴールを演出している。右からのマテウス・サヴィオのクロスがDFにクリアされるが、こぼれ球を右足でシュート、このボールを細谷真大がコースを変えて1-2として1点差に詰め寄った。ところが、その5分後に迎えたビッグチャンスを外してしまったのだ。決めていれば2-2になっていた。だからこその悔恨だった。

「サポーターへの申し訳なさもありますが、自分ができることはまた次にゴールを目指して前向きにやっていくこと。みんなを喜ばせられるように頑張りたい」

 チームが好調な序盤には「早くピッチに立ちたいと思っていて、みんなが躍動している試合を見て僕も早く一緒にプレーしたい思いを強く持っていた」。それがようやくかなって「みんなとプレーする喜びを感じながら」の45分になった。でも、だからこそ余計に、1-4という敗戦は納得がいかない。「結果がついてこないと何の価値もないですから、次は勝利に貢献したい」の思いが強くなった。

 ネルシーニョ監督も「決定機もありましたし、1点を取ってから2点目を奪いにいく上で攻撃のアクセントになってくれました」と称賛を惜しまない。武藤が入ってから好転した攻めの姿勢は、今後のきっかけになるかもしれない。

「後半に入って僕たちが追いかける展開だったので前に前に行くところで、リズムを作る動きは自分でもできていたと思います。点も取れたしいいシーンもあって、僕がチャンスを外してから流れを持っていかれてしまいましたけど、前がかりになって空いた裏のスペースをコンビネーションがうまいチームに使われたという感じです」

 リスクを承知の上で攻め抜く方を選んだ。失点したことは反省点だが、攻撃の意識を失えばこのチームの進化はない。

「ブロックを作ることもできましたけど、逆転を狙っていたのでそこを突かれるのは仕方がないです。点を取らなければいけなかったし、逆転する方に力を使ったので失点してしまいました」

 まだ、完全復活への半歩に過ぎない。大学生との練習試合で30分ほどプレーしただけでの復帰で、試合勘が戻りきらなくても、リズムを変え、チャンスを作り、アシストをして、あと一歩のビッグチャンスを迎えた。

「歳も重ねていろいろと経験してきた中で、迷いなく自信を持ってピッチに入りました。僕に足りないのは結果。次は見せられるように頑張りたいと思います」

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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