上写真=69分から入った宮城天は得意のドリブルで押し込んだ。同点ゴールにつながったCKは宮城の強烈なミドルシュートで得た(写真◎AFC)
「戦わなければいけない」と橘田
川崎フロンターレが勝ち点1と同じように収穫になったのが、「経験」だろう。マレーシアのジョホールバルの気候やピッチのコンディションなどを90分、体感したことで、さまざまな情報を得た。それが残り5試合の大きな基準になってくる。
前半は、鬼木監督の言葉を借りれば「セカンドボールにしても反応がかなり前半は遅かった」「少し重心が後ろに引っ張られた」と珍しく体の重たい45分。暑さが最大の敵となった。
中盤の底にジョアン・シミッチと橘田健人を並べる4-2-3-1でスタートしたが、「後半はシステムを変えたりして押し返してくれたので、評価できるところだと思います」。シミッチをアンカーに据え、橘田をインサイドハーフに上げる4-3-3に変更したことで、劣勢を自分たちの力で押し戻した事実をポジティブに受け止める。
「この試合を次に生かすために、今日以上に戦わなければいけないと感じた。前半は気候的な問題があったが、それを言い訳にしないぐらい戦わなければいけない。こういう試合だからこそ、自分はチームの助けになるようなプレーをもっとしないと」
そう振り返るのは、前後半のフォームチェンジのキーマンにもなった橘田だ。システムを変えた直後の46分にゴール前に出ていって強烈なシュートを放ったことが、後半の反撃の狼煙になった。69分に交代するまで走り回ったが、アジアではまず戦うことが必要だということを改めて感じ取った。
その69分には橘田が知念慶へ、山村和也が車屋紳太郎へ、マルシーニョが宮城天へと代わった。
「勢いを出したかった。ゲームの流れを変えるには人数もありましたし、暑さもあったので、もう一回勢いを出す意味で代えました」とは鬼木監督の狙いだ。その直前の62分には遠野大弥を下げて脇坂泰斗も投入している。
知念は「地面に足を取られる感覚があった」と特有の芝生や土の感触を得た。脇坂は「局面での2対2、3対3、あるいは2対1の数的優位を作るとか、関わり合いのサッカーをやっていきたいと思っていた。ちょっとしたランニングやサポートの距離を近くしたり遠くしたり、いろいろ考えながらプレーしていた」と、暑さや芝生の状況から戦い方に微調整を繰り返していた。
中2日の6連戦で「総合力が試される」とはよく言われることだが、こうした経験を共有するスピード感が重要になってくる。そして、一人ひとりが役割を深く理解して、表現することも。それが例えば、宮城の姿勢に表れる。
「前半に先制されましたけど、スタメンの選手たちが我慢強く戦ってくれたり、ボールを動かして相手を疲れさせてくれるおかげで、後から出てくる選手がやりやすい状況を作ってくれている。ベンチにいる自分たちの役割は、後から出てチームとしてパワーを出すこと」
最後の同点ゴールに至るまでの流れもそうだった。地道にセカンドボールを拾い、ていねいにつなぎ、左右に広げ、足の止まった相手を押し込んで、ゴールに向かう姿勢を見せ続けて、小林悠へのクロスからCKを得た。そのこぼれ球を宮城が強烈なダイレクトシュートで狙い、惜しくもGKに弾かれたが再びCKを獲得して、そこから決めたのだ。
この90分で手にした数多くの情報を生かして、次は広州FC(中国)とのゲーム。初戦では地元のジョホール・ダルル・タクジムに0-5で敗れており、このグループではやや実力が劣る。ここでいかに気持ちよく勝って、ジョホール戦につなげられるか。メンバーのローテーションも含めて、チームの底力が試される。