上写真=谷口彰悟は最終予選を経験し、川崎Fに戻って「安定したパフォーマンスはできていると思います」と実感(写真◎スクリーンショット)
「そこまで特別な感情はないですよ」
ワールドカップ最終予選の崖っぷち、中国戦とサウジアラビア戦のホーム連戦で連続フル出場、ともに2-0というクリーンシートでの勝利に大きく貢献した谷口彰悟が、再び日本代表に選ばれたのは順当……そう言わせるだけのパフォーマンスだった。
この2試合では吉田麻也と冨安健洋が負傷で選出されず、いわばセンターバックのレギュラー2人の留守を守った形ではあった。だが、谷口は今回ももちろん「試合に出たい気持ちは強い」と断言する。
「最終予選で初めて出場することになって、すごくプレッシャーのかかるゲームできちんと勝てたことはすごくいい経験でした。ポジティブな要素だったので、そういう試合を経て自分のチームに帰ってきてきちんとしたパフォーマンスをしないと次はないと思っていました」
納得のプレーで勝利に貢献できたからこそ、緊張感がより高まり、次の景色も見えた。いよいよ最終予選の最後の2試合。オーストラリアとアウェーで、ベトナムとホームで対戦する。本大会進出を決める重要なゲームだ。冨安は再び選外となったが、キャプテンの吉田は帰ってきた。「そこまで特別な感情はないですよ」と笑うが、ポジション奪取を挑む相手であるとともに、世界への扉を一緒に開く仲間だ。
「いままでずっと代表を引っ張り続けた選手から学ぶことはたくさんあると、これまでの活動からも感じていました。もちろん、吸収したいことはたくさんあるし、でも負けたくない部分もあるので、いい関係を築けたらと思っています」
日本代表のキャプテンと、Jリーグ王者のキャプテンの双璧。
3月24日に対戦するオーストラリアは「ビルドアップしてボールを持てる選手がたくさんいて、前線には個の能力が高い選手がいる印象です」。もしかしたら、前節の名古屋グランパス戦が予行演習の一環になったかもしれない。
名古屋はボールを素早く前線に運ぶスタイルで、突破力のある相馬勇紀とマテウス・カストロを左右のワイドに配してきた。前半は右利きの相馬が右で左利きのマテウスが左。後半はそれを逆にしてきた。カットインからのチャンスメークやフィニッシュ、それに伴ってサイドバックのオーバーラップを増やしてきたのだ。
「前半と後半で配置を変えてきて変化が出て、押し込まれる展開が確かに増えました。どういうふうに止めればいいのかはコミュニケーションを取りながらやっていましたし、あとは要は個々のバトルが大事になってきます。ウイングがドリブルで仕掛けてくる相手は特に1対1で負けないこと。サイドバックがオーバーラップを仕掛けてくるシーンもあったので、うちのインサイドやウイングが戻ってこなければいけない状況になりましたけど、頑張って戻ってこいと言うところと後ろのスライドで対応するところははっきりと声掛けしていました。簡単ではなかったけれど、守りきって勝つことができてうれしいです」
日本代表も最終予選途中から4-3-3の配置で戦って結果を残してきた。川崎Fのそれとまったく同じではないにしても、サイドの攻防におけるベーシックな対応は大きくは変わらないだろう。
そうしたディテールを積み上げた先に、ワールドカップ出場権の獲得がある。「キャプテン×キャプテン」が築く壁で、勝利をもぎ取りたい。