川崎フロンターレが試合を追うごとに調子を上げている。それは山根視来も同じで、3月2日の明治安田生命J1リーグ第10節、浦和レッズ戦では今季初ゴールとなる逆転弾を決めてみせた。超攻撃的サイドバックのエンジンがしっかり温まってきた。

上写真=山根視来は得点とアシストを合わせて、まず「15」を目指している(写真◎小山真司)

「全体的に見たらそんなに良くない」

 左足でズバッと突き刺した逆転ゴールが気持ちよかった。

 3月2日の浦和レッズ戦。調子の出ない前半で33分に先制されながらも後半に盛り返し、62分に家長昭博がCKからヘッドで決めて同点に。そのわずか2分後に、山根視来が突き放したのだ。

 中央を脇坂泰斗が力強くドリブルで突き進み、右から並走するようについていくと、ラストパスが送られてきた。これをそのまま左足でゴール左へと突き刺した。待ちに待った今季初ゴールに、スタジアムに集まったファン・サポーターに喜びを伝えた。

「泰斗がいいターンをして運んでくれたら僕のところが空いたので、最後によく見てくれました。ずっと外していたのでやっと入りました。ゴールを決めたらチームが元気になるので、また頑張りたい」

 ただし、まだ心の底からは喜べない。ここまでのチームの戦いを「全体的に見たら内容的にそんなに良くないと思っています」と認めるのだ。すでに横浜F・マリノスに黒星を突きつけられたことはもちろん、勝っている試合でも満足のいくゲームはない。

「攻撃も守備もそうですけど、みんながいてほしいところにいないとか、ちょっとしたズレもあると思います。もっと相手を無力化して押し込んで得意な展開に持ち込みたいところが、なかなかそういう時間が長く続かない」

 移籍3年目にして、最もよくない流れが続いているという感覚が拭えない。

 ただこれも「産みの苦しみ」だと理解している。鬼木達監督がよりスピードを持って攻めて、ゴールに素早く迫る戦いを組み込むシーズンだ。新しいことに挑戦してきて強く大きくなってきたチームだから、このチャレンジの行く先を楽しみにもしている。

「積み重ねることしかないというか、いまはゼロからじゃないですけど発展途上で今年のフロンターレを作り上げている段階。良くなっていくしかないと思うので、そこはポジティブです」

 うまくいかないいまは、伸びしろがたっぷりというわけだ。自身の体がよく動く実感があることも、前向きな思考に作用している。

「体自体は動いている感覚はあって、数字的にも高強度で、スプリントの回数も去年より増えています。ただ、ちょっとした人を探すところや、いまこうしたほうがいいというところの、試合勘と言ったら簡単ですけど、そこが問題だったと考えています」

 日本代表の活動からスタートする難しいシーズンインだったこともあるし、新加入選手がフィットする時間も必要で、新型コロナウイルス感染症の影響も否めない。イレギュラーな経験が続くが、それでも試合を追うごとに改善の道を歩んでいる。

「中から行けるから外が空く、外が強いから中が空く、という好循環に持ち込めればいいと思っています」

 実現のためにその手に携えていくのは「勇気」。

「焦っちゃってるな、というときがあるのは仕方ないと思いますけど、チームとしてそのままにするのか、勇気を持ってつなぎにいくのか。小さいことだけど、些細なことで展開は変わりますからね。そういうところで引き寄せられればと思います」

 今季はゴールとアシストを足して、まずは「15」を狙うシーズン。横浜FM戦のアシストとこの日のゴールで、4試合で「2」を記録している。


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