2022年の川崎フロンターレは「スピード」がキーワードの一つだが、ピッチで見せる素早さでその疾走感を表現するのが遠野大弥だ。3月2日、明治安田生命J1リーグ第10節の浦和レッズ戦で今季初先発、なかなか固定されない左ウイングでのびのびプレーして、ポジション奪取に名乗りを挙げている。

上写真=遠野大弥が駆け回る。全身で「スピード」を体現している(写真◎小山真司)

「どこで出てもいい準備はしています」

 川崎フロンターレの「いま」を象徴しているポジションの一つが、左ウイングではないだろうか。

 おなじみの4-3-3の配置において、浦和レッズとの富士フイルムスーパーカップ2022では前半はチャナティップ、後半はマルシーニョ、J1ではFC東京戦でマルシーニョと知念慶、横浜F・マリノス戦で宮城天と知念、鹿島アントラーズ戦では小林悠がプレーしている。つまり、固定されていない。

 3月2日の浦和戦でこのポジションで先発を勝ち取ったのが、遠野大弥だった。

「常にどこで出てもいい準備はしていますし、練習から自分の良さを出していた結果がスタメンという形になったのかなと思います」

 それまで出場した3試合では4-3-3のインサイドハーフか4-4-2のダイヤモンド型の中盤のサイドハーフだったから、左ウイングは今季初。それでもピッチに出れば持ち味の推進力と運動量で、ところ狭しと走り回った。「昨年最後にケガしてしまって、開幕も出られるか出られないかというところでメンバー入りをつかみ取って、そこからコンディションをどんどん上げていきました」と調子が良さそうだ。

 浦和戦は前半は相手に押し込まれる場面が多く、33分には失点もした。それでも「自分たちに問題があった」と、相手に主導権を握られたという嫌な感覚ではなかった。だから、後半に盛り返すことができた。

「常にニアゾーンを取り続けることを試合を通してチームで共有しました。その結果、後半にいい形で崩したり得点につながったりしたので、良かったと思います」

 4バックの浦和で言えば、サイドバックとセンターバックの間の裏側をウイングが、インサイドハーフが、センターフォワードが、サイドバックが、ときにアンカーまでもが入れ替わり狙っていく。その繰り返しで浦和の守備を少しずつ切り崩していった。

 62分の同点ゴールはまさに、その形がきっかけだ。CKから家長昭博がヘッドで押し込んだ一発だが、このCKを取ったプレーが、ニアゾーン崩しの連続だった。まず右サイドのニアゾーンに遠野が入り込んで受けて、一度下げて逆サイドに回しながら今度は左のニアゾーンをレアンドロ・ダミアンが取って、シュートしたボールが相手に当たって得たものだった。

「後半に修正して自分たちのサッカーをやって、自分はシュートは打てなかったけれどチームとしてやりたいことをやれたので、その結果が試合に出たかなと思います」

 今年、鬼木達監督が選手たちに求めているのは、スピード。より速くゴールに近づくプレーが、新しい川崎Fの魅力になりつつある。どこで出ても自分の良さを出せるのが強みだと胸を張る遠野は、まさに「疾走感」のかたまりだ。


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