上写真=アルベル監督は開幕戦でJ1初采配となる。王者に対してどんな戦いを挑むか(写真提供◎FC東京)
「人生においてサッカー以上に大事なものが」
FC東京では新型コロナウイルス感染症の陽性者が6選手にものぼる事態に陥っている。開幕前日となる2月17日にはU-18所属の3選手がトップチーム登録されるなど、慌ただしい。
「感染者が6人も出たのは残念ですが、いい選手が揃っているので開幕に向けて心配はしていません」
アルベル監督は動じていない。
「いまの状況においてもポジティブにとらえることが重要です。素晴らしいプレシーズンをこなすことができたのは大きなポイントです。遅かれ早かれすべてのクラブが感染者に苦しむ状況に陥ると思いますから、特別なものととらえていませんし、何より選手一人ひとりの健康が大事なので、早期の回復を祈っています」
2月18日のオープニングマッチは、Jリーグの先陣を切って「金J」で川崎フロンターレと対戦する。王者対新生。両者の違いはまずそこにある。
「川崎フロンターレさんは長い間、同じプレースタイルで戦っていて完成度が高く、それが大きな武器だと思います。一方で我々は、新しいスタイルとともに始めたばかりで、明確に180度変える変革の時期を迎えています。まだ1カ月しかたっていません」
完成度に違いはある。でも、共通することもある。
「川崎さんの強みは前線に質の高い選手を揃えているところです。しかし我々も同様に、前線に質の高い選手を揃えています。やるべきことは貫き、勝負にこだわって勝ちを狙います。完成度は川崎さんが先を行っていますが、その差を埋めるには一人ひとりがクオリティーを表現することが大事です」
そして大事なのは、アルベル監督にとっては、トップカテゴリーのリーグで初めて監督として指揮を執る試合だということだ。記念すべき初陣である。
「とても落ち着いています。なぜなら私は53歳と、歳を重ねているからです。いままで人生において多くのさまざまな経験を積み重ねてきましたから、明日の試合に向けてナーバスにならずに落ち着いています。でももちろん、ワクワクする気持ちもあります。毎試合、情熱とともに、エネルギーとともに臨みます」
さらに深みのある言葉が印象的だ。
「常に私の頭の中に持っていることは、これは結局、たかだかサッカーの1試合に過ぎない、ということです。人生においてサッカー以上に大事なものがあります。だから、落ち着いているのです」
達観とすら言えそうな冷静さは、勝負師のそれ。静かな落ち着きを携えて、王者の城に乗り込む。