上写真=小林悠は7年連続2ケタ得点を貪欲に狙う(写真提供◎川崎フロンターレ)
「その考え自体が間違っていた」
「周りを見渡すと、若っ! ってなりますね」
小林悠はそう言って笑う。今年35歳になるベテランから見れば、例えば高校から加入した選手は若い若い。
そんな若手に、相変わらずジェントルだ。
「まずは自分から話しかけにいきますね。だいぶ先輩なので話しかけづらいだろうけど、一回話しちゃえば悠さんはこんな感じかと分かってくれると思うんですよね。話しやすい雰囲気は出せると思うので、まずは声をかけてから、そのあとは来てくれるのを待ちます」
「優しい悠さん」がチームの空気づくりからスタートして、沖縄キャンプでみっちり鍛える目的は、J1で3連覇、AFCチャンピオンズリーグの優勝である。2019年に一度チャレンジした3連覇は、他のすべてのクラブからの厳しい包囲網によって失敗させられている。
「あのときは連覇して、そのままの実力でやれば3連覇できると思っていたんですけど、その考え自体が間違っていたんです。だから今回は、新しいことにチャレンジしたり、まず昨年のことはなかったことに、と考えたほうがいい。攻撃のやり方も守備のやり方も新しいことをして、相手の対策を上回っていくことで3連覇に近づくと思います。維持することをやめないといけないと、チームとしても個人としても言っていかなければと思っています」
経験から出る言葉には重みがある。まずは自らが「新しいこと」に向き合っている。
「強度の部分をもっと上げたいんです。歳を重ねながら強度を上げるというのは矛盾しているように感じますけど、そこが足りないと思っています。強度を上げるトレーニングとして、バイクトレーニングを取り入れています。きつい練習が終わったあとに追い込んでいるので、ピッチの中で成果が出ればいいなと」
勝利のため、そしてゴールのためだ。
「五分五分のボールをマイボールにするところで、体が大きくないので負けてしまうこともありました。踏ん張ってマイボールにするために負けないという部分を上げていって、頑張って味方につなぐことができれば、そこからゴール前に持っていってもらって、あとは自分の得意なゾーンで勝負できますからね」
何しろ、昨季は10ゴールを挙げて、6年連続で2ケタ得点を達成しているのだ。佐藤寿人がサンフレッチェ広島時代の2009年から7年連続、興梠慎三が鹿島アントラーズと浦和レッズで2012年から9年連続など、上を行く選手はいるが、継続中という意味ではJ1で唯一の存在だ。
「得点にこだわっていきたいですし、2ケタは毎年の最低目標です。あと何年続けられるかわからないけれど、毎年通過点として達成したいと思っています」
プロとして13年目のシーズンに2ケタ得点を記録すれば、J1の通算で140ゴール以上になる。カズのJ1通算での139を越えて通算7位に浮上するのだ。そのために身につける「強さ」が、いまから楽しみだ。