上写真=橘田健人は2021年に最も成長した一人。さらなるスケールアップに挑む(写真◎J.LEAGUE)
旗手怜央という基準
川崎フロンターレで2021年に最も成長した選手といえば、橘田健人で異論はないだろう。ルーキーイヤーながらシーズン後半にはアンカーとして完全にレギュラーに定着、中盤のボールハンターとして不可欠な存在となった。
ただ、本人は浮かれない。
「去年1年、このチームでやってきて、技術的に明らかに劣っています。その部分を上げていけばもっといいプレーができてくると思っています。そこは自分に期待したい」
守備に自信を持つだけに、余計に足りない部分がはっきりとした輪郭を伴ってくる。ただでさえライバルがいるこのポジションに、今季は法政大から松井蓮之、そして横浜FCから瀬古樹が加入したことも刺激になる。
「瀬古くんは年齢が僕の一つ上で近いし、サッカー以外の部分で話すことも多いので、とても話しやすい先輩ですね」
同世代の仲間が増えたことを喜びながら、ライバルであることも意識する。
「大学時代から試合をよくやっていましたけど、運動量があって球際の強さを持っている選手です」
瀬古は横浜FCでは2年目でキャプテンを務めるなど、精神的なリーダーシップも併せ持つ。共存と競争の両方の対象になるだけに「球際では負けていられないし、とてもいい選手ですけど負けないように頑張りたい」と引き締める。
ポジション争いへ、そしてタイトル争いへと挑む中で、自信につながるスタンダードを示してくれたのが旗手怜央だろう。ともに戦った仲間が、このオフにセルティック(スコットランド)へと移籍。1月17日のデビュー戦となったハイバーニアン戦で先発して出色の活躍を見せ、いきなりマン・オブ・ザ・マッチに輝いたのだ。
「ちょうど前半の途中まで見ていたんですけど、相変わらず技術が高いし、戦えるので、すごいなと。少しでも怜央くんに近づけるように、もっとやらないといけないと思います」
より上のレベルの選手になるための「生きた基準」ができた。
背番号も22から8へと若返った。昨季までつけていた脇坂泰斗が中村憲剛氏の番号を受け継いで14に変更したことで、その8を背負うことになった。
「ひとケタの番号をつけられると思っていなかったので、ありがたいという気持ちと、期待されていると思うので、結果で応えられたらいいと思っています」
その「結果」に、ゴールとアシストを合わせて10点と設定した。2021年はリーグ戦ではゴールがなく、アシストも1のみ。「10倍」への挑戦になる。
自慢の守備をベースに、まずはJ1初ゴールを決めて勢いに乗りたい。