上写真=佐々木旭は複数クラブの誘いを辞退して、川崎F入りを即決した(写真提供◎川崎フロンターレ)
「左サイドバックは一番勝負したいポジション」
佐々木旭は、小さな頃から川崎フロンターレの大ファンだった。
「きっかけは中村憲剛さんでした」
その姿を見るために等々力陸上競技場に通い、グッズを身に着け、スタジアムの雰囲気と芝生の上で繰り広げられる攻撃的なサッカーに魅了された。「大学に入ってからもずっと、フロンターレに入るんだという気持ちを忘れずに4年間、取り組んできました」と埼玉平成高から加わった流通経済大でもピュアな夢を追いかけてきた。だから「いろいろなクラブからお話をいただいていましたが、大好きなこのクラブでプレーすることを即決しました」と迷いはなかった。
勲章がある。「関東大学リーグMVP」だ。大学4年の2021年度に優勝を勝ち取ると、最優秀選手に選ばれた。ポテンシャルの高さを示すのが、本職の左サイドバックではなく、チーム事情によってセンターバックとして出場した上でナンバーワンの評価を勝ち取ったことだ。
ちなみに、このMVPを獲得した先輩たちはそうそうたる顔ぶれ。日本代表でも活躍した藤田俊哉や羽生直剛(ともに筑波大)らが名を連ね、川崎Fに関係した名前では今野章(国士舘大)、下田北斗(専修大)らがいるほか、現在コーチを務める戸田光洋(筑波大)も1999年度に受賞している。
そんな先輩たちを越えていく期待が集まるが、まずは「本職」で挑むつもりだ。
「もちろん左サイドバックは一番勝負したいポジションです。ずっとやっていましたから」
川崎Fのこのポジションは登里享平がトップランカーで、一時はコンバートされて起用された旗手怜央はこのオフにセルティック(スコットランド)へと移籍したから、登里を突き上げていく役割を担うことになりそうだ。その登里には、練習参加したときにアドバイスを求めたという。
「ボールを受けるときに、選択肢を常に4つ持っているという話をしていたんです。そんなに持ってるんだと勉強になりました。それはうまいわ、と」
ほかに、MVP獲得につながったセンターバックや、右サイドバックでのプレーにも意欲的で、最終ラインのユーティリティーとして頼もしい存在になりそうなのである。ただ、どのポジションでも、チャンピオンチームで激しい競争にさらされるのは自明のこと。
「すごい選手ばかりで試合に出るのも簡単ではありませんが、いつまでもそういう気持ちでいたらサッカー選手としての人生も終わってしまいます。吸収しながら、試合に出る強い気持ちを忘れずに取り組んでいきたい」
そう話して、誠実さと負けん気の強さの両方をのぞかせるのだった。
試合に出ること、のその先に、さらに大きな目標がある。
「プレー面でもそうですけれど、小さい子供に夢を与えられる選手になりたいんです」
自らが「彼」に夢を見たように。
「中村憲剛さんのような、誰からも愛されるサッカー選手になりたいと思います」
そのためには率先してプロモーション活動にも名乗り出て、このクラブ恒例のバナナのかぶりものをはじめ、「何でもやります!」とあふれる意欲を隠さなかった。