上写真=アルベル監督は初日の練習後に青空会見。気持ちよさそうに饒舌に語った(写真提供◎FC東京)
「同じことを、東京で成し遂げたいのです」
アルベル監督とFC東京の新しい冒険は、1月16日に始まった。小平グラウンドで初練習。抽選によって選ばれた100人のファン・サポーターが見守る中、アルベル監督の表現を借りれば、笑顔にあふれた「サポーターのための練習」を行った。
最初のミーティングでは、チームの指針を伝えたという。
「重要なテーマは一致団結することです。プレースタイル、勝利を目指す姿勢、プロフェッショナルとして仕事に臨む姿勢について話をしました」
同じことを、アルビレックス新潟でも実践してきた。2019シーズンからの2年間で魅力的なチームをつくり上げた。
「新潟ではほぼ望んでいたすべてのものを成し遂げることができました。昇格を実現できなかったことは残念ですが」
望んでいたことのうち、とても大きかったのが、そこに住む人々の心に深く存在を刻むことだった。それは「誇り」という言葉で表現される。
「2年前、新潟に降り立ったときにはサポーターの皆さんはなかなかチームのこと誇れる状況ではないと感じました。でも2年間で多くのサポーターがチームのこと、クラブのこと、私たちが表現するサッカーのことを誇りに感じてくれました」
コロナ禍のために事情が異なるものの、新潟は2021シーズンの合計観客数が22万8452人となり、すべてのJクラブの中で最も多かった。それを心から喜んでいる。
「同じことを、東京で成し遂げたいのです」
アルベル監督の野心はそこにある。ボールを大事にして攻撃的で魅力的なフットボールを構築し、プレーで観客を魅了し、多くのファン・サポーターをスタジアムに集め、クラブが愛される存在になり、一緒になって人生を楽しむ。ピッチの上でもその周辺でも、総合的で包括的なフットボールライフをつくり上げることに大きな希望を感じているのだ。
「あらゆるものがすでに構築されている場所に行って仕事をすることに、私は興味を感じません。なにか新しいものをつくり上げようとする、今季始まる東京のプロジェクトのように、ゼロからつくり上げることに興味があるのです」
『強く、愛されるチームをめざして』というFC東京の理念を、本当の意味で実現するためのミッションだ。
始まりには自己批判も含まれる。「8割、9割は満足のいくプレーを見せてくれた」のが昨年の新潟だった。残り1、2割が足りなかったことの責任を自分に向ける。
「当然、私自身は監督としてミスを犯しました。しかし、ミスから学んで次に進んで成長してくのは、サッカーのことだけではなく、人生において素晴らしいことだと思うのです」
そのミスが、2022シーズンのFC東京にどう生かされていくのか。1月17日に沖縄入りしたチームとともに、アルベル監督が新しいプロジェクトに汗を流していく。