上写真=チアゴ・マルチンスはレアンドロ・ダミアンとの丁々発止のバトルで盛り上げた(写真◎J.LEAGUE)
■2021年12月4日 明治安田生命J1リーグ第38節(@日産ス/観衆30,657人)
横浜FM 1-1 川崎F
得点者:(横)前田大然
(川)レアンドロ・ダミアン
「マークするのが難しい選手でしたが、想定内でした」
追いつけそうで追いつけなかった川崎フロンターレを迎えた最終戦。横浜F・マリノスにとっては開幕戦で喫した0-2の敗戦を、シーズン最後のこの試合でひっくり返したかった。それが成長の証になるからだ。
そこに立ちはだかったのが、川崎Fの絶対エース、レアンドロ・ダミアンだった。前田大然と22ゴールで並び、得点王を争う直接対決。センターバックのチアゴ・マルチンスとしては、同じブラジル人ストライカーを止めることで、前田に点を取ってもらって得点王になる手助けをしたかった。
しかし、そのレアンドロ・ダミアンに先制されてしまう。67分にカウンターを浴びて左に展開されたとき、チアゴ・マルチンスはレアンドロ・ダミアンを警戒して並走する形で、まっすぐゴールに戻るコースを取った。ところが、クロスの直前でレアンドロ・ダミアンは足を緩めた。そのまま走ったチアゴ・マルチンスとの間に距離ができた。そこに家長昭博にクロスを入れられ、フリーでヘディングシュートを許してしまった。たたきつけたボールが大きく弾んで、GK高丘陽平がなんとか触ったものの勢いを止められずにゴールを割られた。
「彼はマークするのが難しい選手でしたが、それは想定内でした。常に集中を切らさずプレーしました。ダミアン選手の質の高さを分かっていますし、だからこそ(前田)大然と得点王争いをしているのだと思います。集中を切らさないようにはしていましたが、失点してしまいました。レベルの高さを感じましたが、自分も全力を尽くしました」
ほかのピンチは激しい守備で止めていたから、この一瞬がもったいなかった。だが、このわずか7分後に前田大然が決めて、揃って得点王に。
「もちろん大然に得点を取らせたかったです。自分だけじゃなく、チーム全員がそう思っていました。ただ、まずはチームが勝つことを大前提に大然が決められればうれしいな、という感じだったので、あまり考えずにプレーはできました」
余計な意識が邪魔をすることはなく、結果的にはレアンドロ・ダミアンに2点目は許さずに守り抜いた。
これで2021シーズンも終了だ。チアゴ・マルチンスは負傷で5試合も欠場した。この間に鹿島アントラーズ、名古屋グランパスと結果的に上位に入った強敵に敗れているから、もしチアゴ・マルチンスが万全だったら、と思ってしまう。
「今季は監督がシーズン途中に交代し、本当に難しいシーズンでした。その中でも学びがあり、成長しました。学んだことでもっと強いチームになると思いますし、来季に生かしたいです」
前監督のアンジェ・ポステコグルーから現在のケヴィン・マスカットへ、スタイルは継承されたし、交代当初は連勝だった。しかし、ピッチで戦う選手たちにしかわからない難しさがあったのだろう。
「来季、誰が抜けるのかは分かりませんが、自分が願いたいのは今季のベースの選手を残しつつ、質の高い選手が加入してきてほしいことです。来季はAFCチャンピオンズリーグもありますし、それだけではなく、リーグでも、どの大会でも優勝できる強いチームを作っていきたいからです」
2020年に手にできなかったアジア王者の冠を狙うために。チアゴ・マルチンスは最終戦が終わったばかりだというのに、もう来季の頂上に目を向けている。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE