上写真=川崎Fの選手たちは鳥栖の「ガード・オブ・オナー」で迎えられ、車屋紳太郎は元チームメートのエドゥアルドとグータッチ(写真◎J.LEAGUE)
「もっともっと自由に、リスクを犯して」
川崎フロンターレからショッキングなニュースが発表されたのは、11月18日のこと。7日のJ1第35節のサガン鳥栖戦でセンターバックのジェジエウが負傷、検査の結果、左膝前十字靭帯損傷、左膝内側側副靭帯損傷という重傷で、ブラジルへ帰国することになったという。手術や復帰のメドなどは未定で、鬼木達監督もまだ状況はわからないとしながらも、通常なら全治まで「6カ月から8カ月が妥当ではないか」と悲しむ。
車屋紳太郎も同じだ。
「ミーティングで一言、ジェジからありました。シーズンの最後までプレーしたいという思いを持っていたのを知っていたし、泣いていて、最後まで戦いたかった気持ちが伝わってきました。そういう選手のためにも、もちろんジェジと同じことはできないけれど、できることを最大限出してしっかりやりたいと思います」
車屋は今季、センターバックに専念することを決めて、ジェジエウは仲間であり同じポジションでしのぎを削るライバルだ。だからこそ、ジェジエウのためにもリーグ戦の残り3試合と天皇杯を戦うつもりだ。
その鳥栖戦で車屋は左センターバックで先発し、後半からは3バックで戦った。途中で4バックに戻したが、新しい挑戦だ。その3バックの時間帯の51分には相手のクリアを拾って最終ラインからペナルティーエリア手前まで持ち上がり、旗手怜央を壁に使ってワンツーからフィニッシュを放ったチャンスがあった。リーグ優勝を決めた次の試合で、0-3でリードされている状況。なんとしてもゴールがほしかった。
「3バックにしてズレができていたというか、僕の前にスペースが空いていたので、チームにとって相手を押し込むためにはパスがいいかドリブルがいいかを考えながらやっていました。あそこで運べたシーンはいい判断だったと思っています」
いきなり見せた新システムの効果だろうか。
「うちはパスサッカーだと思われていますけど、どうやって運ぶべきかを判断するのは課題です」
「パスだけではない」ということを自ら示してみせるのが、センターバックの選手だということが、このチームの強みかもしれない。
「3バックでやっていて、まだ2枚、センターバックが後ろにいるので、もっともっと自由に、リスクを犯してもいいという判断でした。センターバックだとあそこまで運んでいくのはなかなか難しいけれど、深いところまで進入していってラストパスやシュートまでできるプレーは出したいと思っていますから」
自慢の4-3-3システムでもアンカーの脇から持ち出してビルドアップに関わるのは、車屋の持ち味。それがさらに進化したワンシーンだった。ちなみに、フィニッシュは利き足ではない方の右足だったが、「角度的には右足が良かったのでいい連係で入れたと思います」とあえて右足に落とした旗手の判断を称えた。
次のセレッソ大阪戦では連敗を阻止しなければならない。しかも、相手も天皇杯で勝ち残っていて、決勝で当たる可能性がある。
「ここからは天皇杯にもつながりますし、嫌な印象を与えられれば、決勝で当たるとしても優位に立てると思うので、そういうところを見越して戦いたい」
しっかりと次のタイトルもイメージしながらの大切な一戦。「ジェジエウのために」をピッチで表現する、その第一歩だ。