上写真=脇坂泰斗がベスト4進出の主役に。1ゴール2アシストで鹿島を下した(写真◎小山真司)
■2021年10月27日 天皇杯準々決勝(@等々力/観衆9,776人)
川崎F 3-1 鹿島
得点者:(川)オウンゴール、旗手怜央、脇坂泰斗
(鹿)荒木遼太郎
「シュートを打てばなにかが起こる」
左CKのキッカーとして。鋭いフィニッシュを見舞うシューターとして。脇坂泰斗が3つすべてのゴールを生み出した。
10月27日の天皇杯準々決勝で、川崎フロンターレは鹿島アントラーズを3-1で一蹴した。32分、48分、51分と効率よくゴールを奪ったあとは、鹿島も強引に攻めの圧力を強めてきたが、1点でしのぐ強さも見せた。そして、その3ゴールの立役者が脇坂なのだった。
先制点は左CKをニアに蹴り込んだ。マルシーニョと競り合った鹿島のDF町田浩樹の頭に当たってゴールに吸い込まれるオウンゴール。2点目は左でサイドバック常本佳吾とセンターバック関川郁万の間をきれいに通すスルーパスを送ってマルシーニョを走らせ、キープする間にインサイドでサポートしてボールをもらうと、ペナルティーエリアの角付近からシュート、これが旗手怜央の頭に当たってコースが変わってゴールへと飛び込んだ。
「マルシーニョが深い位置を取ってマイナスで受けて、フリーだったのでシュートを打てばなにかが起こるなと、ひらめいて打ちました」
本当に、なにかが起こった。
「前向きなプレーが結果につながりました。怜央の首が太くてよかったです」
そう言って報道陣を笑わせたが、確かによく考えれば弾道の低いパワーショットだったから、ダメージは相当だったかもしれない。
そして、3点目は自らの美しいミドルシュート。自陣から組み立ててパスと立ち位置で鹿島のプレスをすべてはがし、脇坂が右の家長昭博に展開してから、そのドリブルで作られた時間を利用して前に進んでもう一度もらうと、相手は誰も寄せてこなかった。トラップしてから十分な時間を使う余裕があって、ペナルティーエリアの少し外から左足を振ってゴール右上へずばり。
「ディフェンダーとキーパーがファーを意識した立ち位置を取ったのがわかったんです。最近、左足のシュートを練習していて、天皇杯のボールはブレるのはわかっていました。狙ったところに飛んだので、練習の成果が出ましたね」
3つのゴールの源になったのは、前半の鮮やかな仕掛けの連続だっただろう。特に右サイドでは家長、山根視来と3人で面白いようにくるくるとポジションを入れ替え、パスの緩急や角度、タイミングを変え、ボランチのディエゴ・ピトゥカの背中側、サイドバックの安西幸輝とセンターバックの町田浩樹の間を集中的に狙って何度もきれいに崩した。
「最近、みんながビルドアップのときの立ち位置の整理ができてきました。チーム全体で相手の背後を取ったり、3人目で出ていく動きができています。僕はボランチの三竿(健斗)選手とディエゴ・ピトゥカ選手に捕まらないようにしていて、ワイドの選手がサイドバックをロックしてくれるのが肝になってくるので、そこが今日はできていたと思います」
そうやってしっかりと計算して崩した上で、フィニッシュではひらめきを大事にする。その絶妙のバランスが好調の秘密かもしれない。鬼木達監督も「強度の高い相手にどのくらいできるのかが課題でしたが、今日は本当に素晴らしかった。自信を持って続けていってほしいと思います」と手放しの褒めようだった。
シーズンのクライマックスが近づくにつれて、どんどん調子を上げていくナンバー8。最高の成長曲線はどこまで続いていくだろうか。
取材◎平澤大輔 写真◎小山真司