上写真=神戸戦でもビッグセーブを見せたチョン・ソンリョン。攻撃の第一歩にも(写真◎J.LEAGUE)
「決勝だと思って100パーセントの力で」
J1で今季3度目の5連勝、残り7試合でいよいよ優勝へのカウントダウンも始まる川崎フロンターレ。懸念材料があるとすれば、鹿島アントラーズ、湘南ベルマーレ、ヴィッセル神戸と3試合連続で先制点を許していることだろうか。過密日程の影響は大きく、特にここ2試合はエンジンのかかりきらない前半に一瞬のスキで奪われている。
ただ、鬼木達監督も「0-1で折り返せれば逆転できる」と胸を張るように、悪いなりにも複数失点していないのは強みだ。今季のJ1では2失点を喫したのはセレッソ大阪、FC東京、名古屋グランパス、ベガルタ仙台の4チームのみ。ちなみに、引き分けた仙台戦以外はすべて勝利を収めている。
センターバックに負傷者が続出するなど、苦しい時期も続いたが、そんなときに砦になるのはやはりGKチョン・ソンリョンだ。特にオープンな展開になってくる後半、相手も高い守備ラインの裏を狙ってくるが、それはお見通し。ペナルティーエリアから軽やかに飛び出していって、事前にボールを回収する。その前への勢いが、攻撃サッカーをさらに後押ししている。
「攻撃的なチームで試合をする中で、キーパーを含めてリスク管理を高く保っています。全員攻撃、全員守備を高い意識で臨んでいて、監督が攻撃につなげることを望んでいるので最善を尽くすだけです」
当たり前、と言わんばかりだが、GKにも「前へ」の意識が浸透していることが、川崎Fの強さを象徴していると言えそうだ。
お見通し、という意味では、9月29日のJ1第28節ヴィッセル神戸戦でもビッグセーブでチームを救った。77分、イニエスタがペナルティースポットのあたりから右足ボレーでコンパクトに狙ってきた。鋭いボールが谷口彰悟の左足に触れてコースが変わった。しかし、チョン・ソンリョンは左足を残してしっかりはじき返したのだ。
「彰悟に当たって重心がずれましたけど、最後まで我慢してギリギリのところまで残せました。でも、一人で止めたという思いはないですし、勝っていても負けていてもそれ以上失点はしないという気持ちがつながったと思います」
10月2日、FC東京との「多摩川クラシコ」が終われば、ようやく過酷な連戦が終わる。
「5連戦の最後の試合は決勝だと思って、試合に出る人も出ない人も一丸となって、100パーセントの力で戦いたい」
相手も自慢の強力アタッカーが顔を揃えるが、5試合ぶりにクリーンシートを達成して「決勝」を勝ちきりたい。