上写真=田中聡は15分に先制ゴール。風のようにニアサイドに入って流し込んだ(写真◎小山真司)
■2021年9月26日 明治安田生命J1リーグ第30節(@等々力/観衆4,897人)
川崎F 2-1 湘南
得点者:(川)旗手怜央、知念慶
(湘)田中聡
「練習でもたくさんやってきたとおりの形」
前半に先制しながら後半に追いつかれ、それでも首位の川崎フロンターレ相手のアウェーゲームでドローを目前にしていたアディショナルタイムに、衝撃的な逆転ゴールを浴びた。90+4分に知念慶に決められて、勝ち点1が湘南ベルマーレの手からこぼれ落ちた。
降格圏とわずか1ポイント差で16位だから、勝ち点3を、悪くても1を持ち帰りたいゲームが続く。中盤の中央で全体をコントロールした田中聡は「収穫といった部分では、自分たちの気持ちの面をもっと強気にというか、自信を持ってやらなければいけないのかなと思いました」と絞り出す。
最初の45分は上々だった。山口智監督が「満足できる前半だった」振り返ったとおりの展開で、守備の規律が整っていてハードワークを繰り返し、幸先よく先制ゴールも挙げた。15分、相手陣内の右サイドで茨田陽生が寄せて旗手怜央のパスを引っ掛けて奪うと、田中から大橋祐紀、そして平岡大陽と左サイドに素早くつなぎ、もう一度受けた大橋がペナルティーエリア内で縦に勝負を仕掛けてセンタリング、スライディングで防ぎにきた山根視来の足に当たってボールがゴール方向に向かったところで、田中が風のように入ってきて右足に当てて流し込んだ。
「監督が(山口)智さんになってから、ペナ脇(ペナルティーエリアの横)のスペースを取りにいけと散々言われていて、練習でもたくさんやってきたとおりの形だったので、自然と体が動いて得点につながったと思います」
練習は嘘をつかない、というわけだ。
だが、後半に川崎Fが3人を交代させ、さらには家長昭博が加わると、リズムを持っていかれた。それでもカウンターの矢は構え続けたし、53分にはデザインされたスローインから最後は田中自身もミドルシュートを狙っている。
「前半は自分たちのサッカーができていて、その中でもっとゴールを取れたというシーンがたくさんありました。そこで決めきるか決めきれないかの差だと思います。後半は個人としてもチーム全体としても何もできなかった」
衝撃的な逆転負けを食らったから言葉が少ないのは無理もないが、田中が自信を持つように前半の戦いぶりは十分に川崎Fに通用するものだった。残り8試合では横浜FC、ベガルタ仙台、徳島ヴォルティスなど残留を争うライバルとの直接対決も多く残す。この日の前半の体感が必ず生きてくるときが来る。
取材◎平澤大輔 写真◎小山真司