川崎フロンターレの新戦力が最高のデビューだ。9月18日、明治安田生命J1リーグ第29節の徳島ヴォルティス戦でマルシーニョが先発出場すると、3つのゴールすべてに絡む活躍だった。次は憧れのジーコが築き上げたクラブ、鹿島アントラーズ戦。さらなる活躍に期待だ。

上写真=川崎Fのうわさの新戦力マルシーニョがついに登場。いきなり全ゴールに絡んだ(写真◎J.LEAGUE)

「チームメートがスペースを与えてくれた」

 鬼木達監督でさえ、どれぐらいピッチで表現できるのかわからないまま、送り出したという。それほど未知数で謎めいていた。でも逆に、先発で起用したほうが計算できる。その鬼木監督の勘が吉と出た。

 川崎フロンターレの新戦力、マルシーニョが9月18日のJ1第30節徳島ヴォルティス戦でヴェールを脱いだ。俊足のドリブラーという情報は広く伝わっていたが、ではJリーグの舞台でどれだけできるのかまではわからなかった。連戦続きでフルコートでの練習もできない状況だったからだが、そんな不安は、マルシーニョ自身がプレーで笑い飛ばしてみせた。

 34分のことだった。左サイドでボールを持つと最初の一歩でスピードアップ、マークにつく藤田征也にまっすぐ向かっていって右に動かし、鈴木徳真が挟みに来たところでこの2人の間を抜けてさらに前に進んだところで倒されてPK。これぞマルシーニョ、を存分に見せつけた。

「特徴を一つ見せることができました」と胸を張る。ボールを受けた瞬間にはもう、トップスピードに入っていた。「チームメートがスペースを与えてくれたので、利用できました。その結果、あのようにPKをもらえました」と仲間の動きに呼応できたことを喜んだ。

 42分には、まさに川崎Fらしいゴールをアシストしてみせた。セカンドボールを拾った橘田健人から預かった旗手怜央がくるりとターンして前を向き、マルシーニョがくさびのパスを受けると、ワンタッチで脇坂泰斗へ優しく渡す。脇坂はそのままDFの外側を巻いてゴール右に流し込む完璧なコントロールショットで2点目が決まった。「あのタイミングでボールが入ったときに、迷わずに前向きの選手が見えたので落とすことができました」。パスで中央を真っ二つに割るコンビネーションの一員になった。

 3点目は右CKから知念慶がヘッドで決めたものだが、このCKは左サイドでマルシーニョが横パスで旗手をインサイドに走らせ、そこから送ったクロスがクリアされたことで得たものだ。3つのゴールにさまざまな形でかかわるアピールぶりだった。

 やや足を痛めて62分で交代となったが、鮮烈のデビュー戦。この先がますます楽しみになってくる。

 次は鹿島アントラーズとのアウェーゲームだ。ジーコが築き上げたクラブとして有名だが、そのジーコが名声を築いたクラブがフラメンゴ。

「もちろんジーコのことはよく知っています。ブラジルで歴史を作った人ですし、僕は小さい頃からフラメンゴのファンで、お父さんもそうなんです。だから、ジーコのクラブと対戦することをお父さんも喜んでいます。試合に出られるならスタートからであろうと途中からであろうと、チームのために必ず勝利を収められるように戦いたいと思います」

 徳島戦以上のパフォーマンスを見せて勝利を飾って、ジーコをうならせて、お父さんをもっともっと喜ばせたい。


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