今季、ヴィッセル神戸の一員となり、着実にチームの力になっているのが井上潮音。途中交代でも流れを変える貴重な存在として、チームの戦い方の幅を広げる役割をまっとうしている。8月25日の明治安田生命J1リーグ第26節の大分トリニータ戦では久々にアシストを記録するなど、貢献度は高い。

上写真=井上潮音は大分戦で勝利を確実にする3点目をアシスト。短い時間でも結果を残した(写真◎J.LEAGUE)

「結果でしか生き残っていけない世界」

 井上潮音のふわりとしたクロスが、勝利を確実にするチーム3点目を導いた。J1第26節でヴィッセル神戸が大分トリニータとのアウェーゲームで、前半のうちに2-1と逆転して試合を進め、最終盤を迎えた87分のことだ。

 武藤嘉紀の豪快な突破から得た右CK。井上が蹴ったボールは一度は相手に弾かれるが、ルーズボールをすかさず自分のものにして顔を上げ、ファーサイドに柔らかなクロスを届けた。これを菊池流帆が得意のヘッドでねじ込んだのだ。

 今季、東京ヴェルディから移籍してきたテクニカルなMF。シーズン序盤、いきなり新チームにフィットして先発起用が続き、その後はベンチからの登場も増えたものの、常に試合に絡み続けている。ベンチ外だったのはわずかに4試合で、神戸の一員として地位を確立している。

 だが、それはあくまで出場した試合の数についての話。その中身はというと、井上の自己評価は辛めだ。

「シーズンも3分の2が終わりそうですけれど、自分自身のプレーは出せていないと思っています。結果だけ見てもそう思いますし、新しい選手が入ってきて、自分の存在価値を上げるためには結果でしか生き残っていけない世界です。だから、残り3分の1では結果にこだわりたいと思っています」

 大分戦のアシストが今季2つ目で、ゴールはまだない。だから、より貪欲になっている。それは、熾烈な3位争いを勝ち抜くためにどうしても必要だ。

「ACL圏内に向けて一つも落とせない試合が続くので、100パーセントの力を注いでいければいいと思います」

 首位の川崎フロンターレ、2位の横浜F・マリノスが勝ち点1差で繰り広げる優勝争いも盛り上がるが、少し離されてはいるもののそのACL出場権を手に入れることのできる3位争いも激しい。神戸が1試合少ない状況で3位に立っていて優位だが、名古屋グランパスが1差、鹿島アントラーズ、サガン鳥栖、浦和レッズが3差で追いかけてくる展開。

「これからの戦いで大事になってくるのが、途中から出るメンバーがいい流れにできるかどうか。チームのレベルを上げるために大事なことです。いま試合に出るのは短い時間ですけど、ポジションを問わずチームの力になるためにやっていければいいと思います」

 井上が記録している2つのアシストのうち、もう一つは、3月10日のFC東京戦でマークしたもの。3-2で勝利を収めた試合で、相手ゴール前でのクリアミスをすかさず拾ってドウグラスに預け、5分の先制ゴールをお膳立てした。そのFC東京とは、次の第27節で再び相まみえる。ルヴァンカップでも対戦していて、こちらは0-2、0-0だから、今季は1勝1分け1敗と五分の星だ。

「守備が堅くて前線のブラジル選手3人を中心にカウンターに特徴あるチームだと思うので、こちらがボールを持ちつつ、リスク管理をしっかりしながら試合を運べればいいと思っています」

 3月の対戦で失った2つのゴールもカウンターからだった。それだけに「リスク管理はいつも以上にやることが大事かなと思っています」と繰り返す。

 時間が長くても短くても、ゴールを狙い、カウンターに備える。その繰り返しで、まずは目の前のFC東京戦に100パーセントの力を出して勝つだけだ。


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