AFCチャンピオンズリーグでグループIの首位突破を決めた川崎フロンターレ。7月9日の第5節で韓国の大邸FCを3-1で下して5連勝だ。振り返れば、初戦の大邸戦でPKをストップして窮地を救ったからこその快進撃。GKチョン・ソンリョンがあのシーンを振り返る。

上写真=チョン・ソンリョンは「攻守にハードワークを見せられた」と5連勝の要因を語った(写真◎スクリーンショット)

「これは通過点だしスタートです」

 川崎フロンターレのACL初戦は6月26日の大邸FC戦。開始早々の8分にまさかの先制ゴールを許し、29分にはPKの大ピンチを迎えることになった。そこで、大邸のエジガルが蹴ったボールを、右に飛んでストップしたのが川崎Fの守護神、チョン・ソンリョンだ。

「PKの秘話、教えましょうか?」

 そうやって、自ら口を開いた。

「エジガルのPKの映像を見ておいたんですけど、真ん中か右に蹴っていました。3つのPKのうち2回が真ん中で1回が右。だから、少しだけ右を空けました。横に揺さぶるような動きをするキーパーには真ん中に蹴っていたので、右を空けたら右に蹴ってきました」

 研究の成果が駆け引きに反映されて、ビッグセーブを生んだ。「運が良かったんじゃないですか」とにこやかにうそぶいてみせるが、ここで0-2になっていたらもっと難しい展開になっていただろうし、逆転勝利に届かなかったかもしれない。そうすれば、グループステージの戦いもまた違ったものになっただろう。

 母国である韓国のチーム相手だったから、「なんで止めるんだ」とか「あれを止めたから負けたんだよ」「決めていれば勝っていた」と試合後に大邸の選手から言われたりした、と笑って振り返る。鬼木達監督からは直接、防いでくれてよかったと声をかけてもらったという。

 続いて3連続無失点勝利に貢献して、迎えた第5戦で1点を失ったものの3-1で勝利を収めた。5連勝で見事に1位突破。

「シンプルに1位通過をうれしく思います。でも、これは通過点だしスタートです。これからもいい準備をしていかないといけないと思います」

 あくまで目標はてっぺんだ。ベスト16に名乗りをあげたに過ぎない。それでも、中2日の連戦という過酷な日程を勝利の連続で乗り越えたことには、大きな意義がある。

「メンタルの部分は、これまで公式戦で負けていないという状況が成長させたと思います。同点でも先行されている状況でも、追いついて負けない、勝ちにつなげる、というメンタルの成長は感じましたし、いつでもゴールできるという精神的な強さがあります。後ろで我慢してじれずにやっていけば、というのはありますね」

 7月11日に第6戦を戦って日本に戻ったあと、リーグ戦や天皇杯を戦いながら、9月14日か15日には一発勝負のラウンド16が待っている。

「全体的に一人ひとりの技術レベルが高いので、こっち(ウズベキスタン)で合わせて練習しているから大きな問題はなかったと思います」

「ACLのみならず、いつものリーグ戦からハードワークしようという意識が体に染みついているので、誰が出てもハードワークできます」

 総力戦で首位突破をもぎ取った経験によって、チョン・ソンリョンが、川崎Fがまた一つ、強くなった。


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