上写真=谷口彰悟は5試合すべてでピッチに立った。「自分たちらしい内容とはほど遠かったけれど、それでも勝つという目標を達成できたのは良かった」(写真◎ 2021 Asian Football Confederation)
「そういう感覚はだいぶ鍛えられたかな」
川崎フロンターレは鬼木達監督もどの選手も、「相手を見てプレーする」という基準を重視している。Jリーグでは、圧倒的な強さを誇るこのチームに対して、守り倒そうとするチームがあれば、同じ攻撃的な姿勢で真っ向勝負を挑むチームも、鋭い前線のプレスを間断なく仕掛けてくるチームもある。川崎Fの選手たちはピッチの中で相手の出方を見て、自分たちでその対処法を選び出し、実行する。
情報がいくらでも手に入るJリーグならば、事前のスカウティングも有用だ。だが、このACLは2度ずつ当たる中2日の6連戦で、特に最初の対戦まではどんなチームかわかりにくい部分が多かった。
「事前に情報は分析スタッフから入れてくれていますけれど、始まってみないとわからないことだらけでした」
7月9日に大邸FC(韓国)をレアンドロ・ダミアンのハットトリックで3-1で下して5連勝、首位突破を決めた翌日、キャプテンの谷口彰悟はここまでの戦いをそう振り返った。
「キックオフから相手がどういう布陣なのか、誰がどこにいるのかをみんなが見ながら確認していますし、相手が前から来るのか構えるのかは、パス1、2本で分かります。その中でボールを動かしながら探りながら、どこが空いてくるのは数分で判断してやっています。そこは確かにACLではより意識してやりますし、そういう感覚はだいぶ鍛えられたかな」
ピッチに入ってから相手を分析するまでの時間は、スピードアップしている実感がある。
「いろいろな相手に対して瞬時にどこが空いているか、どこから来ているのかを判断しながら実行に移せるのはフロンターレの特徴の一つですし、そこはより鍛えられた分、日本に帰ってからの試合にも生きると思います。そうやっていろいろな経験を力に変えていきたい」
ひとまず首位突破のミッションは達成し、第6戦を残すものの、帰国後はまたリーグ戦、天皇杯が待っている。さらにその先に、ACLのラウンド16が9月14日か15日に開催される予定になった。重要なのは、ホーム・アンド・アウェーではなく、一発勝負で行われると発表されたことだ。そうなればなおさら、相手を瞬時に見極める「スキャン能力」が問われてくる。
「一発勝負ということになりそうな感じですが、その難しさは理解しています。今回のグループステージで戦ったように、相手がどう来て何を狙っているのかを判断して、自分たちがどうしたほうがいいのかは、日本のリーグとはまた全然違うんです。だからまだ先のことですけど、そういうマインドに変えないといけないと思っていて、リーグ戦、カップ戦と並行しながら戦う中で、その部分の切り替えはきちんとしていきたいと思います」
今回の過酷なスケジュールの中で、センターバックだけではなくアンカーでもプレーして、個人としてもまた経験値を積み上げた。新たな発見、刺激を得たウズベキスタンはタシケントでの日々も、もうすぐ終わる。また強くなって、日本に戻る。