上写真=目の前の天皇杯とその先のACLを見据えて。フィッカデンティ監督は難しい作業を丹念にクリアするつもりだ(写真◎J.LEAGUE)
サプライズは美しい
6月9日の天皇杯、22日からのAFCチャンピオンズリーグ。マッシモ・フィッカデンティ監督はここからのチームマネジメントは「かつてないほど難しい」と引き締める。でもだからこそ、腕が鳴るというものだ。
まずは天皇杯2回戦。中国リーグの三菱水島FCが相手だが、「公式戦なのでカテゴリーに関係なく、この試合に勝つための準備と位置づけてきました」と時間を有効に使った。「私も日本に来て長いですし、この天皇杯がサプライズにあふれる大会だということは分かっています。試合にどう入るのかを間違えてはいけない」と警戒を解くことはない。
もっとも、サプライズが起きることは「サッカーの美しさでもあると言いたい」とも強調する。
「世界的にサッカーの魅力は、サプライズを起こそうと思って戦って、それがはまればできてしまうスポーツであるということです。バスケットボールや野球は明らかにカテゴリーの差がある試合はほとんどサプライズは起きないものですが、サッカーはどんなに内容がいい試合をしていても、ガチガチに守備を固めてでもシュートが1本入ったチームが勝ってしまいます。サプライズはうちに起こってはいけないけれど、サッカーは素晴らしいスポーツです」
カテゴリーが上の名古屋としては「一切相手を見下すようなことをしない」ことがサブライズを防ぐ振る舞いだと伝えている。
それが終われば、ACLが待っている。タイで集中開催となったが、長期間、異国に滞在して練習と試合を繰り返す毎日になる。すべて中2日、16日間で6試合という驚異の過密日程。
「練習と試合以外は部屋にいなければいけないし、食事もそれぞれ部屋でとらなければいけないと説明を受けています。隔離された状態で海外で暮らし、気候もハードだろうし、帰国後もバブルで生活しなければならないのです」
サッカーだけではなく、人間としての生活レベルで非常に厳しい「戦い」が待っているのだ。もちろん、サッカーの面でもやらなければならないことはたくさんある。
「全員が試合に絡んでくることになるので、チーム内でも選択肢を増やす作業をして、同じ戦い方でもいろいろな選手が関われるようにしていきます。明日(天皇杯)が終わって1週間はその機会にしなければと思っています」
まさに総力が問われる16日間。「まずはこの1カ月をやりきりたい」と力強く宣言するフィッカデンティ監督と名古屋の新しい挑戦が始まろうとしている。