横浜F・マリノスはホームでヴィッセル神戸と対戦し、2-0で勝利を収めた。上位対決として注目された一戦で破格のパフォーマンスを披露したのが、前半早々にマルコス・ジュニオールに代わって登場した天野純だった。

上写真=攻撃を活性化させ、自らも1ゴールを記録。天野純はチームの勝利に大きく貢献した(写真◎J.LEAGUE)

■2021年5月9日 明治安田生命J1リーグ第13節(@日産スタ/観衆4,,977人)
横浜FM 2-0 神戸
得点:(横)オウンゴール、天野純

正確無比のサイドチェンジとゴール

 開始20分だった。足に違和感を感じていたマルコス・ジュニオールに代わって、天野が登場した。ポジションはそのままトップ下に入ったが、この交代を機に横浜FMは一気に流れをつかむことになる。

 スペースを見つけて使うプレーが秀逸で、神戸のボランチの脇やサイドに流れて味方からボールを引き出し、ノッキングさせることなくスムーズに配って攻撃を加速させた。相手のプレスに手こずった立ち上がりの時間帯から状況は一変。いい形でボールを持つシーンも増えていく。そして41分、自陣のハーフウェーライン付近右でボールを受けた天野は、逆サイドへ大きく展開。敵陣深い位置でボールに追いついたティーラトンが入れたクロスは、中で待っていた前田大然とオナイウ阿道には合わなかったものの、神戸のCBフェルマーレンに当たってゴールに吸い込まれた。

 鋭く速いクロスを入れたティーラトン、ニアサイドに走り込んだ前田、中央で構えたオナイウがそれぞれの役割を全うしたからこそ生まれた得点ではあった。ただ、見逃してならないのは、相手守備陣を後手に回らせることになった天野の正確無比なサイドチェンジだ。精度の高いロングパスがあったからこそ、この先制点は生まれた。

 天野の活躍はこれで終わらなかった。80分には自ら追加点を決めてみせる。相手GK前川黛也のミスパスを水沼宏太が右サイドでカットすると、レオ・セアラにつなぎ、最後はボックス左からエウベルがシュート。これはGKに防がれるが、その跳ね返りにいち早く反応し、ボールをゴールにプッシュした。

「エウベルがシュートを打って、こぼれ球に誰よりも早く反応しようという意識がありました。あそこにいたのが一つのポイントだったと思うし、ゴールをカバーしにひとり入ってきていたので、普通に詰めても弾かれると思いました。だからなるべくゴールの隅に思って蹴り込みました。今、状況が見えているので、非常に落ち着いてできていると思います」

 今季リーグ戦で出場した8試合のうち、先発は3試合のみだ。主力の一人には違いないものの、完全なレギュラーかと問われれば、そうではないだろう。ルヴァンカップでは仙台戦の2得点などその実力をいかんなく発揮しているが、リーグ戦でも同様に結果を出したいとの思いが強かったに違いない。

「マリノスには質の高い選手がそろっていて、最近はリーグにスタメンで出ていないですけど、ルヴァンカップも含めて、ピッチに出たときに自分の質というのをしっかり監督やコーチングスタッフ、サポーターの皆さんに見せつけたいと思っています。そして『やっぱり天野純がいいじゃないか』って思いにさせることができているんじゃないかという実感はあります」

 上位対決となった神戸戦で勝利に大きく貢献した天野は、現在の好調について「自らの質を証明することにフォーカスし、『サッカーを楽しもう』という心構えに変わったことが大きい」と説明する。さらに「きょう結果は残せましたけど、もっともっとできたと思うし、ファン・サポーターの方に見ていて面白いと思われる選手になりたい。そのためにはもっともっとやることはあると思っています」と、さらなる高みを見据えた。

 この日、日産スタジアムで、あるいは中継でそのプレーを見た人は本人が言うように『やっぱり天野純はいい』『天野純をもっと見たい』と少なからず思ったことだろう。そう感じさせるほどに印象的なパフォーマンスだった。


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