上写真=今季、川崎Fから名古屋に加わった齋藤学。古巣との頂上決戦を存分に楽しむつもりだ(写真◎J.LEAGUE)
「ほかのチームのサポーターも楽しみになる試合に」
「まずは楽しみたいと思います」
それが偽らざる気持ちだろう。名古屋グランパスが首位の川崎フロンターレに勝ち点3差で肉薄して、その状態でまさかの2連戦となり、ゴールデンウィークの目玉カードになった。齋藤学にとってはそれに加えて、昨季まで3シーズン、所属していた古巣なのだ。リーグ優勝をはじめ、多くのタイトルを獲得してきた思い出のクラブとの連続バトルに、心躍らないはずはない。
「お互いにいい成績同士で試合ができるのは注目されるし、それが2連戦と異例で前例のないことで、そういう状況にしたのも僕らでもあるしフロンターレでもあります」
頂上決戦が連戦になったのは偶然のこととはいえ、ここまで9勝2分け1敗と、首位に立っていてもおかしくない好成績を残してきたからこその気持ちの高まりがある。絶対王者の川崎Fを倒すにはいい頃合いだ。
「僕らもそうですけど、見に来てくれる人も、ほかのチームのサポーターも楽しみになる試合にしたいですね」
幅広いサッカーファンに喜んでもらうことができるというのは、選手冥利に尽きるだろう。舞台は整った。名古屋ファミリーからすれば、古巣であるチャンピオンを倒す齋藤学、という物語を見たくなる。
当の本人は冷静そのものだが。
「今年のフロンターレを見ていて、相手のミスを得点につなげる力が強いな、と思います。スコアが動いたあとのリアクションが強くなっているのかな。去年も意識していたけれど、より強いのでたたみかけています。でも、そこを防がれたらロースコアになっていて、それは去年と違って多いので、行ききれなかったら相手にチャンスも生まれていますね」
さりげなく、そんな攻略のヒントも口にした。では、実際にはどこを突き崩していこうか。
「言わないですけど」
ちょっとはぐらかして笑ってみたものの、「どこを、というのはないんですよね」と真顔に戻る。
「気が緩んでくれればいいけれど、緩むようなチームではないし、どこと言われてどこだとは出てこないですね。でも、世界中を見ても完璧なクラブは存在しないですからね。僕にとってもグランパスにとっても穴になるところ、スキを見つけたいと思います。それを自分たちでどれだけ作っていけるかが、一つ大事なところかな」
その「どこ」が見当たらないのなら、試合中に自分たちで作ればいいだけだ。