上写真=再開初戦は「いつも難しい」と鬼木達監督は見ていたが、大分を2-0で下して盤石の戦いを見せた(写真◎J.LEAGUE)
「常に全力、が自分のスタイルですからね」
代表ウィークが終わり、川崎フロンターレはJ1再開の大分トリニータ戦に2-0できっちりと勝利を収めた。39分にセットプレーのこぼれ球を三笘薫が蹴り込んで先制。66分に相手が自陣でボールを回すところをうまく引っ掛けて、三笘が追加点を挙げた。
その2点目、相手のミスのおかげで決まった、ように見えて、鬼木達監督はこのゴールを高く評価した。
「2点目は一見、相手のミスに思えますけれど、自分たちがずっとプレッシングをかけたからこそ起きたところですし、ミスのようなものを逃さないところに人がいるのが大事なことだと思っているので、それも含めて前への意識が出ていると思っています」
こちらの左サイドに出たときにまず登里享平が縦を、旗手怜央が中を消して限定し、バックパスさせた。旗手がそのまま二度追いして中央へ戻させると、今度はレアンドロ・ダミアンがGKの前に立つ。縦に付けてきたところを寄せた三笘が、パスが跳ねたのを見逃さずに奪ってからそのまま蹴り込んだ。華麗につなぐだけではない、豪快に決めるだけではない。連動してコースを絞って奪い切って、ショートカウンター。何でもできる川崎Fの流儀が明確に表れたワンシーンだった。
そこに「代表効果」も感じている。山根視来、脇坂泰斗が日本代表で、田中碧、三笘、旗手がU-24日本代表でプレーして帰ってきた。
「球際のところは常々言っていますけど、代表に行って多少なりとも感じて帰ってきたのかな。その重要性をより表現しているのは、戻ってきて最初のトレーニングで思いました。球際の強さがそのまま前へのパワーにつながっているのかなと見ています。点を取るために相手の守備が整う前に攻めるのはどのチームも鉄則ですし、より頭で理解していることで行動できているのかなと思っています」
これで7勝1分けと今年も死角が見当たらないが、次の試合が一つのヤマ場になりそうだ。相手はサガン鳥栖。現在は4勝2分け1敗の4位と安定していて、何より失点1という堅守が光る。昨季はホームもアウェーも引き分けで、唯一勝利を収めることができなかった相手だ。いわば「コンプリートV」を阻まれた因縁がある。
「そこは正直、そんなには気持ちでどうこうというのはないんです」
鬼木監督はフラットな視線を保つ。
「どの相手に対しても気持ちのところでこのチームだから、ということはありません。常に全力、が自分のスタイルですからね。ただ、去年2引き分けで勝てていないのは確かです。タイミングや采配の部分もあると思っているので、ほかのチームと変わらずに分析して、戦いたいと思っています」
チーム力のさらなる充実もその気持ちを後押しする。大分戦ではチョン・ソンリョンの負傷で丹野研太が移籍後リーグ戦初出場を果たしたし、登里享平も負傷から戻ってきて左サイドバックに入った。これまでそのポジションを務めて好調を維持していた旗手はインサイドハーフでプレーした。
「いろいろなところで競争が始まるなと思っています」
常々、「練習を見るのが楽しい」と話している鬼木監督。チーム力の源であるハイレベルのポジション争いがさらに活性化していることを喜んでいる。