湘南ベルマーレはJ1第4節でベガルタ仙台に勝ったものの、続く第5節はFC東京に惜しくも1点差負け。この2試合で先発したのが名古新太郎だ。仙台戦では自身J初ゴール、FC東京戦でも攻守に奮闘したが、浮嶋敏監督が仕込んだのは二つの役割の融合だった。

上写真=鹿島から期限付き移籍してきた名古新太郎。初先発初ゴールなど攻撃のアクセントになっている(写真◎Getty Images)

■2021年3月17日 明治安田生命J1リーグ第5節(@味スタ/観衆:4,133人)
FC東京 3-2 湘南
得点:(F)田川亨介、ディエゴ・オリヴェイラ、渡辺剛
   (湘)山田直輝、高橋諒

「このチームに来てからあまり時間はたっていませんが、心得ています」と浮嶋監督

 鹿島アントラーズから今季、湘南ベルマーレに期限付き移籍で加わった名古新太郎。鹿島では特別指定選手時代も含めた3年で出場したのは24試合で、さらなるチャンスを求めてやって来た。

 第4節のベガルタ仙台戦では移籍後初先発を果たすと、54分に結果で示した。左からの高橋諒の折り返しを、逆サイドから中央に入ってきてワントラップ、すかさず左足でGKの股下を通す冷静なシュートを見舞って、記念すべきJリーグ初ゴールを決めてみせた。これがチーム2点目となり、3-1の今季初勝利に貢献した。

 続く第5節のFC東京戦でも先発出場した。ポジションは引き続き、2トップの後ろ、アンカーの田中聡の前に、山田直輝と並ぶ場所だった。特徴的だったのは、そのベースのポジションからどう動いて関わっていくか、の部分。

 攻撃のときには大きく幅を取ってウイング的に振る舞ったり、あるいはインサイドで相手最終ラインに並ぶ場所に入って、FWと連動しながら裏抜けを狙った。守備になると、自分のサイドにボールがあればプレスを果敢に仕掛け、逆サイドにあれば田中がボールサイドにスライドしたあとの中盤の危険なスペースを埋めていく。「責任エリア」が幅広い。

 サポーターとクラブでつけたキャッチフレーズは「蝶舞蜂刺」で「ファンタジスタ」と読むが、ファンタジーを生み出す前の地道な準備が目を引いた。

 これを「シャドーでもボランチでもあるようなポジション」と表現するのが、この役割を授けた張本人、浮嶋敏監督だ。

「ああいうシャドーでもボランチでもあるようなポジションで、積極的にプレーしてくれています。逆サイドにボールがあるときにどうポジションを取って、どういうタイミングで前に絡んでいくのかは、彼はこのチームに来てからあまり時間はたっていませんが、心得ています」

 FC東京戦の79分に2-2に追いついたシーンは、左からの山田の折り返しを中央に入っていた高橋が決めたものだが、高橋の向こう側には名古がフリーで入ってきていた。もし高橋が打てなくても名古が決められただろう。「そこにいる」ことの重要性を体現したシーンで、その感性は上記の仙台戦のゴールで証明したのと同じものだ。

「いいタイミングで飛び出して、山田と2人で攻撃をサポートしているのが、得点が入っている要因ですね。役割はセカンドストライカーでゴール前に入っていくこととボランチとしてプレーすること。非常にいいプレーを見せてくれています」

 浮嶋監督もそのプレーぶりに強くうなずく。3得点、2得点と、名古が先発した2試合に連続で複数得点を挙げているのは偶然ではない、ということだ。

取材◎平澤大輔 写真◎Getty Images


This article is a sponsored article by
''.