上写真=最後尾から仲間を鼓舞し続ける西川周作。この苦しみを乗り越えてみせる(写真◎Getty Images)
■2021年3月14日 明治安田生命J1リーグ第4節(@日産ス/観衆:4,864人)
横浜FM 3-0 浦和
得点:(横)前田大然2、小池龍太
「目指すサッカーをまとまってやっていく」
横浜F・マリノスに0-3。スコアが示す以上にゲームそのものをコントロールされて敗れた。リカルド・ロドリゲス監督も「3点取られただけではなくて多くのチャンスを作られた。彼らのほうが上回っていた」と潔く認める。
最後尾からの視線はピッチの状況をどのように捉えていただろう。GK西川周作が指摘するのは「使い分け」だった。
「後ろからのビルドアップを目指しているサッカーですが、そればかりになってしまって、危険な位置で取られたりして、それで失点してしまいました。つなぐ意識が強くて相手の背後だったり、前線の杉本(健勇)選手により楽なボールを入れる回数が少なかったと思います。その使い分けをしなければいけないと今日感じました」
特に26分の2点目は自陣で横浜FMのハイプレスをまともに食らって、一気にゴールを陥れられてしまった。
リカルド・ロドリゲス監督の新しいスタイルを身に着けようと、誰もが必死だ。ボールを大切にして前進していきながらも、西川の目には意識の柔軟性に欠けているようにも映ったということだ。ゴールからの逆算が最優先される中で、その確率を高めるはずの「つなぐ」という手段が目的化しすぎている。チャンスがあるなら素早くゴールに迫るべきで、あるいは最悪の状況は回避されるべきで、その判断のバランスも含めてチームの中ですり合わせている段階だ。
「味方とのいい距離感でポジションを取って楽な体勢でもらうところや、体の向きについてもまだ伸ばせると思います。つなぐだけではないところは見せていないといけないですし、ゴールを取るために有効な攻撃を、90分通して試合の流れを見ながら仕掛けられるかどうかも伸ばせるところです」
「つなぐこと」ではなく、ゴールを奪うことが目的で、そこにジレンマを抱えるのはこのスタイルを目指すにはよくあること。この日の対戦相手である横浜FMも、もちろんタイプは異なるとはいえ、新しい方法論を採り入れた当初は苦しんだ。
だからこそ、大切なのは続けること。それが一番難しいことかもしれないが、あきらめない。
「上に行くには、今日の結果も内容も見つめ直して、いいところもたくさんあったので継続的に続けていきたいと思います」
ハーフタイムの前後には攻撃の狙いが見えるシーンはあった。例えば、41分に即時奪回から汰木康也が左の中間ポジションで受けて小泉佳穂に短いスルーパスを送り、ペナルティーエリア内に潜り込ませた。2分後には同じく左サイドで伊藤敦樹が相手に触られないポジションに入ってボールを引き出し、ワンタッチでターンしてすぐさま裏に抜け出した汰木へ、センタリングを明本考浩がヘッドで狙ったチャンスもあった。
「キャンプからやっていることをリーグが始まってもブレずにやることが大事です。1試合や2試合に負けて変えたら逃げていることになるので、リカの目指すサッカーをまとまってやっていくことが大事です。結果を出すことができれば、全員が自信を持って同じ方向に向かっていけますから、この敗戦から学んで次の札幌戦に生かしてホームで勝てるようにしたい」
3月17日の北海道コンサドーレ札幌戦は中2日で迎える。かつての監督、ミハイロ・ペトロビッチが率いるチームに、いまできるすべてをぶつけるつもりだ。
取材◎平澤大輔 写真◎Getty Images