東日本大震災から10年目となる2021年シーズン、手倉森誠監督は再びベガルタ仙台を率いることになった。明日3月6日には、2011年のリーグ再開初戦の相手、川崎フロンターレをホームに迎える。使命感とともにチームを率いる指揮官が、あの日を振り返り、これからを語った。

上写真=2011年4月23日、震災後、再開されたJリーグで仙台は川崎Fに逆転勝ち。手倉森誠監督は「先頭に立って頑張る使命感」を表現した(写真◎J.LEAGUE)

取材・文◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE

10年前の川崎F戦と10年後の川崎F戦

 今季、ベガルタ仙台に復帰したタイミングは、何かの運命だったのだろう。東日本大震災から10年。2011年にベガルタを率いていた手倉森誠監督はタクトを再び握ると、かつてと同じように被災地の"希望の光"になることを誓った。

「まだまだ復興に向けて、懸命に戦っている人たちがいます。いまはコロナ禍の影響で窮屈な生活を強いられている人もいますし、心の健康とも向き合わないといけません。困窮している方々に、明るい希望を与えられる存在にならないといけない。東北の地で、東北の魂を表現していきたいです」

 奇しくもリーグ開幕から2節までは、10年前と同カード。すでにアウェーでサンフレッチェ広島(△1-1)と戦い、次節(3月6日)はホームに川崎フロンターレを迎える。

「当時を思い出します。あのようなことをまたやってみせろ、と言われているようです。東日本大震災で被災した人たちは、川崎フロンターレ戦の劇的な逆転勝利(○2-1)に勇気づけられたはずです」

 2011年4月23日、等々力陸上競技場に足を運んでいたベガルタの多くのファン・サポーターは、頬を濡らしていた。雨のせいだけではない。さまざまな思いを抱え、目を真っ赤にしていたのだ。ベンチの前に立ち尽くしていた指揮官も同じだった。

「チームには東北人が少なかったのですが、みんな東北のために戦ってくれました。被災地の人たちが注目する再開初戦で、勝って見せたんです。勇気を与えることができたと思います。そう思うと、選手たちへの感謝の思いがあふれ、青森出身の東北人として涙がこぼれました」

 震災の傷跡が深く残るなか、リーグ再開に向けて準備を進めている時期に手倉森監督は、毎日のように選手たちに話をしていた。

<復興に向け、先頭に立って頑張るという使命感を持たないといけない。これまでは当たり前のようにプロ選手として、生活してきたけど、もう当たり前ではないんだ>

 思いのこもった言葉は選手たちの心に響いた。再開前の千葉合宿から目の色が変わっていた。オフなしのきついトレーニングも精力的にこなし、一体感は一気に高まっていく。手倉森監督は、選手たちがコンディション以上のパフォーマンスを発揮する予感を感じ取っていた。等々力で白星をつかんでからは、見えない力にも支えられた。あらためて、破竹の勢いで勝ち点を稼いだシーズンを振り返る。

「あのフロンターレ戦以降、負ける気がしなくなりました」


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