上写真=「ファミリー」に感謝の気持ちを語ったマッシモ・フィッカデンティ監督。仕切り直して「ホーム開幕」札幌戦に臨む(写真◎スクリーンショット)
「こちらにもスピードはありますからね」
突然の決定に、名古屋グランパスのマッシモ・フィッカデンティ監督が動いた。ガンバ大阪の選手4人とスタッフ1人に陽性判定が、選手1人、スタッフ1人にJリーグの基準による濃厚接触疑い者が出たことで、3月3日のJ1第11節名古屋対G大阪戦が中止となった。Jリーグからの正式なリリースがあったのは17時40分、キックオフの80分前のことだった。
フィッカデンティ監督はすぐに豊田スタジアムで選手が練習をできるようにすること、希望するファン・サポーターが見学できるようにすることを提案し、実現させた。ホーム開幕戦となるはずだったこの試合を楽しみにしていた多くの「グランパスファミリー」が喜んだ。
「結果としてそういう評価をいただいたのは知っていますが、その場で少しでも何かできるかと提案したところ、クラブ側もそういうことならと全力で動いてくれたのです。私にありがとうと言ってもらうものではなく、この提案に対してサポーターも受け入れてくれて、混乱しかねない状況だったチームを支えてくれて、スタジアムに残った方も、残れなかった方も、改めてファミリーの皆さんに逆に感謝したいと思います」
救われたのはチームの、クラブの方だと感謝を口にした。
突然の出来事だったが、結果的に選手たちに大きな動揺はなかったという。
「あの夜、我々自身が何ができたかというと、あの事態を受けた上で次にどこへ向かっていき、いまの時点で何ができるかというとらえ方しかなかったと思います。スタジアムで練習させてもらって、選手たちは次の試合に向けてスイッチが入っている雰囲気を見せてくれましたし、その雰囲気をファミリーの皆さんが一緒に作ってくれたことに感謝したいと思います」
「選手も分かってはいましたが、あえてそういうようなことを言葉にして共有して、影響はなかったと思います」
そして3月6日に迎えるのが、北海道コンサドーレ札幌戦だ。これがホーム開幕戦ということになった。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が繰り出す「ミシャ式」を抑え込んで、勝利をもぎ取りたい。
「あくまで我々がどういうサッカーをぶつけていけるかで勝機を手繰り寄せることができると思います。90分の中で想定できることを準備して、その場で当てはめてチーム一体となって戦っていきます。継続して勝ち続けるチームになるようにしていますから、何も変えずにやっていきたいと思います」
前提としては、自分たちのプレーを揺るぎなく続けること。一方で「想定できること」についても、もちろん準備万端だ。
「相手がボールを持って人数をかけて運んでくれば、こちらも人数をかけて守ることになります。どの試合でもそこのベースは持っています。フルコートの1対1を大事にしてくるチームですから、こちらのボールになったときに相手が人数をかけてくる最初のプレスに対しては、数的優位を作りながら空いているスペースを使ってチームとして崩していきます。こちらにもスピードはありますからね。最初のプレスをどうかわすのかがポイントになると思います」
フルコートマンツーマンをひらりとかわして一気に相手ゴールになだれ込む。そんな戦いが予想できるが、そればかりではないのもまたサッカーの面白いところ。
「ただ、相性の良さというか特徴のぶつかり合いは札幌も理解しているはずなので、彼らの特徴を前面に押し出してくるのか、あるいは変えてくるのかは分かりません。試合が始まってからプラン通りにいくのか、対応するのかを考えることになります」
問われるのは対応力。キックオフ直後の選手たちの振る舞いで、その日の名古屋の狙いが見えてくるだろう。