上写真=決勝ゴールを決めて小林悠がこの表情!(写真◎小山真司)
■2021年2月20日 FUJI XEROX SUPER CUP 2021(@埼玉スタジアム/観衆4,208人)
川崎フロンターレ 3-2 ガンバ大阪
得点:(川)三笘薫2、小林悠
(ガ)矢島慎也、パトリック
「もう一度得点王を目指して」
「3段ロケット」のような一撃だ。
川崎フロンターレは90+6分、田中碧が縦パスを突き刺し、受けた遠野大弥がターン、さらに縦に送るとその先には小林悠がいた。しっかりとGK東口順昭の立っている場所を見極めて、少しだけためてテンポをずらし、右に持ち出して角度をつけてから右足でていねいにシュート、糸を引くようにゴール左へと飛び込んでいった。
「大弥が前向きに持ったときにはもう、自分の特徴である動き出しで相手より早く動いてパスのスペースをつくって、そこに大弥がいいボールをくれたので、いいコースに蹴ることができました」
ガンバ大阪のラインの間を引き裂いた、二つの縦パスとフィニッシュ。直後のガンバ大阪のキックオフのすぐ後に優勝を決めるホイッスルが鳴って、劇的な幕切れになった。
ピッチに入ったのは72分。リードが消えて2-2に追いつかれた5分後のことだった。
「入るちょっと前に2点目を取られて、前に行くパワーが落ちてると感じていましたし、守備でも強度が落ちているなと。その意味での選手交代でもあったと思いますし、もちろん同点だったので、ゴールが必要でした」
もちろん、状況は分かっていた。
「結果論にはなりますけれど、取ってやる、ヒーローになるのは自分だ、と思って入りました」
本当にヒーローになった。今季初の公式戦でタイトル獲得をもたらす一発だったことも価値があるのだが、もう一つ、思いやりのゴールでもあった。
「PK戦になると、新加入選手がピッチにいて(PKを蹴ったときに)勝敗が分かれてしまえばいきなり責任を負わせることになってしまうな、と思って、できれば90分で終わらせたい気持ちもあったんです。だから最後にいい時間に取れてよかったと思います」
この時間帯にプレーしていた新加入選手は遠野とルーキーの橘田健人で、川崎Fデビューのその日にもしPKを失敗したら、気持ちがいいわけはない。そんな仲間への思いがフィニッシュの瞬間に右足に込められた。
「今年は昨年を上回る成績を残せばベストですね。ACLもあるのでさらに多くのタイトルが取れるように、そして個人としては、もう一度得点王を目指していきたいと思います」
シーズン開幕を告げるスーパーカップで劇的決勝点。千両役者・小林のプロ12年目のシーズンも、また華やかなものになりそうだ。
現地取材◎平澤大輔 写真◎小山真司