上写真=充実のキャンプを過ごし、チームの仕上がりについてネルシーニョ監督が自信を示した(写真◎Getty Images)
ブラジル人2人が合流未定も準備着々
柏がチームとして始動したのは2月3日。やや遅い印象も受けるが、1月4日にルヴァンカップ決勝を戦い、他クラブよりも長いシーズンを戦ったことを考えれば、当然の判断だった。タフなシーズンとなった昨季にしっかり積み上げたものもあり、指揮官は開幕から逆算し、戦える集団を着々とつくり上げている。
「非常に良いキャンプを過ごせています。トレーニングの中で今のところ目立ったケガ人も出ていません。非常に良い仕上がりで、昨年からリハビリを継続している選手はいますが、チームは活動を再開してからテンポを取り戻していると感じます。技術的な部分はこれからさらに良くしなければいけないが、非常に良い準備ができている」
経験豊富な指揮官はテーマを持ってキャンプに臨み、チームに落とし込めていると話した。
「昨年から積み上げてきたことに加えて戦術的な部分をより強化しようと考え、トレーニングをしてきました。実戦的なトレーニングの中で、われわれのスタンダードを確立しようというテーマがあります。選手たちにまずこちらから求めるものを理解してもらうこと。その点に取り組んできました」
チームで確立を目指しているスタンダードとは、主に戦術面のこと。指揮官は「選手には共通理解のもとでポジションを取り、状況を見極めて連係、連動すること」を求めているという。
「キャンプ中もAチームとBチーム、2つに分けてトレーニングする機会がありましたが、過密日程を乗り切る上で、ピッチに入った選手が、こちらの要求に応えることが必要です。今シーズン、スタートダッシュを切るためにも、それぞれポジションに入った選手がそれぞれの役割を理解してピッチに入り、その役割を遂行しなければいけない。そして味方選手の役割をわかった上で連係、連動することです」
連係を深めるという意味で言えば、このタイミングでまだ新外国籍選手がまだチームに合流できていないのは、予想外だったはずだ。文字通りの不測の事態だ。今季、チームは少数精鋭で補強を行なったが、中心として期待されるドッジ、アンジェロティという2人のブラジル人選手は、日本政府の新規外国人の入国制限措置により、まだ来日できていない。ただ、ネルシーニョ監督に焦りはまったくなかった。クラブの働きかけでどうにかなる問題ではなく、与えられた状況の中で最善を尽くすだけ、というスタンスだ。その姿勢は一貫している。
「2人のブラジル人については、入国規制があるので、レイソルの方から彼らにメニューを渡し、しっかりと準備をしてから、いつになるか分かりませんが、緊急事態宣言が解除され、入国できるタイミングになったら、少しでも早くチームに適応できるように準備を進めてもらっています」
2月27日の開幕から5月にかけて、実質90日間で25試合以上のゲームを戦う。ほぼ中3日。昨季の過密日程にも匹敵するハードスケジュールだ。緊急事態宣言が解除され、2人のブラジル人選手が来日してもシーズン開幕からしばらくは『戦力』として計算できないかもしれない。それでも、そうした状況のすべてを指揮官は受け入れ、最善を尽くしている。
「これまでの取り組みを継続し、さらにチームとして進化していく。そのスタンスは変わりません。われわれがトレーニングできる時間はまだ1週間以上にあります。(開幕の)セレッソ戦に向けて一番良い状態で臨めるように仕上げたいと思っています」
百戦錬磨の指揮官は、落ち着いた口調で言った。新シーズンに向けて、準備着々。今季もネルシーニョ・レイソルは、動じず、揺らがず、一切ぶれない信念のもとで、まっすぐに進んでいる。