上写真=マッシモ・フィッカデンティ監督は、まずはチームづくりが順調であることを示唆した(写真◎スクリーンショット)
「満足しているかどうかというと、満足しています」
2月3日、名古屋グランパスが戦った大宮アルディージャとの練習試合で、小さなミスからゴールを献上した場面。長澤和輝はピッチの中で選手同士で確認済みであることを明かしたが、マッシモ・フィッカデンティ監督もあえて「そのまま受け入れる」と話した。
「いろいろな要素がある」という分析の中で、まずはセオリーを確認し、全体で共有すべきであることを確認している。
「運悪くと言ってもいいし、いろいろなことが重なってしまって失点になります。一つのミスでカバーできれば失点にはなりません」
「そのゾーンでそういうプレーは選択しないほうがセオリーとしていいところもある、とか、このチームではこういう戦いをしているのでそのプレーはリスクが高い、とか、このチームはこうやって選手を配置しているから、ということが、もともといる選手と新加入選手で共有しきれていない部分があると思います。そうして、リスクが最悪なものとして失点につながってしまったわけです」
もう一つは、フィジカルコンディション。「こういう時期なのでミスをカバーできる体力がないので、ストレートに失点に直結しました」と疲労は織り込み済み。キャンプ序盤で体作りに多くの時間を割く時期で、新加入の木本恭生がプレーしなかったのも「疲労がちょっと溜まっているので、無理をしないということだけで休ませました」というぐらいだから、それぞれに体の重さは否めない。
そうして生まれた失点が、チーム全体に「刺激になった」と感じている。
「ミスをすれば失点するぞ、と口で言うだけでは実感として残りませんから、今回得た危機感をしっかりと生かすべきかなと思っています。いま解決しなければいけない、良くしなければいけない部分として、そのまま受け入れなければならないと思います」
ミスや失点に右往左往することなく、まずは正面から受け止めることが重要な時期だということだ。プレシーズンの貴重なレッスン。
とはいえ、今季最初の対外試合として行われた45分×3本マッチは、順に1-2(得点者=ガブリエル・シャビエル)、1-0(同)、2-1(相馬勇紀2)という結果で、おおむね好感触だった。
「もちろん得点にこだわるところもありますが、内容について満足しているかどうかというと、満足しています。どういう考えを持ってプレーした上でミスが生まれてしまったかを振り返ると、最初にこういうミスをしておけば引き締められると思いますし、3本目の最後の20分から25分ぐらいは良かったと思います。ここはチームとして力が備わっているなという部分や、まだ伸ばさなければいけないなというところもありますが、今後の練習につなげていける部分は見えたと思います」
力が備わっている、のは、やはりサイドアタックだ。主力クラスだけでもマテウス、相馬勇紀、前田直輝が揃っている中に、齋藤学も加わった。
「実際に強さがどこにあるかというと、両サイドの選手にいろいろな特徴があって、スピードを生かしたり、技術を生かしたり、勝負して1対1に勝って中にボールを入れたり、チャンスをつくったり、そこから得点に直結するプレーができたり、というのが武器になるのは分かっています。そういうシーンを多くつくるサッカーをしようとしたこと自体がすごく良かったと思います」
もちろん、そこでゴールがもっと生まれるに越したことはないが、それは次のステップの話。
「実際チャンスが生まれましたが、崩した上で中に入ったボールに対して最後のフィニッシュの形までつくりきれなかったところもあります。そこはコンディションが上がっていけば勢いやスピード感は出てくるものですから、今日は方向としてはいいのではないか、と言えると思います」
守備のミスで得た刺激と攻撃への可能性という収穫を得た135分。マッシモ流グランパスの新たなスタートは上々のようだ。