上写真=記念すべき天皇杯の100回大会に優勝した川崎フロンターレ。J1とのダブルを達成(写真◎小山真司)
■2021年1月1日 第100回天皇杯決勝(@国立競技場/観衆13,318人)
川崎F 1-0 G大阪
得点:(川)三笘薫
僕が今までやって来たことは後輩たちに託せる(中村憲剛)
G大阪は王者・川崎F対策に万全を期していた。リーグ戦で2敗した相手に、守備からゲームに入る。3-4-2-1のフォーメーションを採用し、守備時に両アウトサイドが下がって最終ラインを5人で形成。中盤は2シャドーがサイドに加わってドイスボランチと4人でラインを編成し、5+4のブロックを築いて川崎Fを迎え撃った。
それでも、相手の分厚い守備をこじ開けるのが今季の川崎Fだ。相手を揺さぶり、スペースを作り、間で受けてはボールをはたいて、シュートチャンスをつくっていく。田中、L・ダミアン、三笘がボックス内から次々と狙った。ただ、シュートはことごとくゴール正面をついてしまう。
前半は守るG大阪、攻める川崎Fという構図のまま終了。勝負の行方は残り45分に委ねられた。
後半、川崎Fは無理には食いついてこないG大阪に対し、守田や田中が前方に走ってパスを引き出し、ブロックを崩しにかかる。攻撃姿勢をさらに強めると、55分、ついに均衡を破った。先制点を決めたのは、準決勝に続いて背番号18を背負うアタッカーだった。
敵陣やや右よりの位置で粘ったL・ダミアンが中央へ斜めのパスを送ると、左サイドから中央へと走り込んだ三笘がうまくボールを収めて、右足でゴール左へと蹴り込んだ。仕掛け役にも受け手にもなれる三笘が、再びネットを揺らしてみせた。
この1点で攻めざるを得なくなった相手に対して、川崎Fはテンポの良いパス回しとボールの即時奪回を徹底して、ゲームをコントロール。2点目を取りに行く姿勢を保ちつつ、時計の針を進めていく。G大阪も残り20分を切ってG大阪も渡邉千真と福田湧矢を投入し、陣形も4ー4ー1-1に変えて攻撃姿勢を強めたが、結局スコアを動かすことはできず、試合は1ー0のまま終了。川崎Fは前半から攻めの糸口を探り、後半にそれをしっかりつかんだ。一方でG大阪は1点を失った後に攻撃に力を注ぎ、終盤に相手ゴールに何度も迫ったが好機をモノにできなかった。
「複数タイトルを狙っていた中で、リーグ戦の成果がこのゲームで消えてしまわないように試合に臨みました。最後は苦しかったですけど、選手がよく頑張ってくれたと思います。サッカーの難しい部分で、決め切るところで決めないとやはり難しい試合になる。
(中村憲剛のラストゲームでしたが?)、まずは本当にこのチームを引っ張てくれてありがとうと。今日は試合に出られませんでしたが、ここまでやってきたこと、数多くのタイトルがとれたことは憲剛のおかげ。憲剛あってのフロンターレなんで。心からお疲れさま、ありがとうと伝えたい」
鬼木達監督はそう言って、天皇杯を初めて制した選手たちを称え、この試合が現役ラストマッチだった中村憲剛についても、これまでの功績を改めて称えて感謝の言葉を贈った。そして試合をピッチサイドで見つめた中村憲剛は現在のチームについてこう語った。
「感無量です。うれしすぎます。おそらく、今、世界で一番幸せなサッカー選手なんじゃないかと思います。僕も声をかけながら一緒に戦っていたつもりです。出られなかったのは、残念ですけど、それは勝負なので。勝ちがすべてというのは4年前の決勝で敗退したときに痛いほど感じたこと。みんながその悔しさの上に4年間、培ってきたものが、最後に出せた。またフロンターレの新しい歴史になったと思います。今日の試合は出れていませんし、しっかりフロンターレの形はあるので、僕が今までやってきたことは、後輩たちに託せるくらい成長しているからこそ、引退できるというのもあります」
相手に守られても、自分たちから仕掛けて崩す。対策を立てられても、積極的に挑んで打ち破る。王者の王者たるゆえんを示した川崎フロンターレが、この日、2冠王者として、その名を歴史に刻んだ。
現地取材◎佐藤 景 写真◎小山真司