上写真=ゴールを決めた家長昭博を小林悠(右)と守田英正が祝福する!(写真◎J.LEAGUE)
■2020年12月19日 明治安田生命J1リーグ第34節(@三協F柏/観衆5,137人)
柏 2-3 川崎F
得点:(柏)オルンガ、瀬川祐輔
(川)家長昭博2、レアンドロ・ダミアン
・柏メンバー:GKキム・スンギュ、DF北爪健吾、大南拓磨、山下達也、古賀太陽、MF三原雅俊、大谷秀和(79分:小林祐介)、瀬川祐輔(79分:高橋峻希)、江坂任(64分:仲間隼斗)、FWクリスティアーノ、オルンガ(75分:呉屋大翔)
・川崎Fメンバー:GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、ジェジエウ、山村和也、登里享平(90+7分:谷口彰悟)、MF守田英正、田中碧、旗手怜央(78分:脇坂泰斗)、FW齋藤学(46分:家長昭博)、レアンドロ・ダミアン(78分:小林悠)、長谷川竜也(46分:三笘薫)
後半目覚めた王者の凄み
柏はルヴァンカップ決勝、川崎Fは天皇杯準決勝、決勝と、共にカップ戦が残されている状況で迎えたJ1リーグ最終節。言わば『続き』がある中で迎えた試合で、先手を取ったのはホームチームの柏だった。
14分、エースがらしさ爆発の得点を決める。相手のクロスを山下がクリアし、そのボールを拾った北爪が右前方のクリスティアーノへ送ると、クリスティアーノはダイレクトで相手最終ラインの裏へ浮き球を供給した。落下地点へ走り込んだのが、オルンガだった。
大きく弾んだボールをジャンプしつつ相手DFの山根を弾き飛ばして収めると、GKチョン・ソンリョンを左にかわして無人のゴールへボールを流し込んだ。柏は24分にも同じような形を演出し、今度はオルンガが屈強なCBジェジエウを弾き飛ばしてシュートを放つ。ただ、シュートはチョン・ソンリョンの正面を突き、ゴールはならかった。それでも強みであるオルンガを最大限に生かす戦い方を見事に実践。序盤は柏が優勢にゲームを進めた。
柏の1点リードで迎えた後半、川崎Fは齋藤に代えて家長、長谷川に代えて三笘を投入。攻撃の活性化を狙ったが、次にネットを揺らしたのも柏の方だった。北爪が右サイド深く進入して角度のないところから放ったシュートは一度はブロックされるも、そのこぼれ球にオルンガが反応。北爪へとつなぎ、北爪は即座にクロスを供給し、逆サイドから走り込んできた瀬川が鋭いシュートでボールをゴールに突き刺した。これで柏が2-0。後半開始30秒も経たぬうちに追加点を挙げた。
ところが、2点のビハインドを背負った王者がここから目を覚ます。2失点目を献上した直後の48分。右CKの場面で田中が蹴った滞空時間の長いボールに対して家長がマーカーの江坂よりも先にジャンプして頭を合わせ、1点を返す。チームに勇気を与えるこの得点によって、川崎Fは攻撃の圧力を強めていった。55分には相手のミスに乗じて加点に成功。GKキム・スンギュのキックミスを見逃さなかった三笘が素早くボールを拾ってパスを出し、最後はL・ダミアンが無人のゴールに蹴り込んだ。
2-2となったあとは、ボールを握る川崎Fに対して、柏がリアクションする展開となる。だが、残り15分を切って小林と脇坂を投入した川崎Fが、相手のお株を奪う鋭利なカウンターで、ネットを揺らした。三笘が自陣からピッチ中央をドリブルで進み、DFが寄せてきたたタイミングで左前方を走る家長にスルーパス。家長はコースを消しにかかるキム・スンギュの動きを冷静に見つつ、ボールを浮かすように左足ですくってゴールへと流し込んだ。
その後、柏もあきらめずに最後までゴールを目指したが、試合はそのまま終了。王者が後半に3ゴールを集めて逆転勝利を飾った。
「シーズンのラストのゲームで、ここまで全員で戦ってきた、その姿を見せてくれたと思います。前半と後半のあたまに失点しましたけど、とにかく全員でハードワークしながら戦った結果、逆転することができました。今シーズンを象徴するかのような彼らの頑張りを見せてもらったと思います。この勝利を天皇杯につなげていきたい」
後半、1点を取ってから一気に畳みかけていく凄みは、川崎Fの鬼木達監督自らが言う通り、「2020年を象徴」していた。試合の中で問題点を把握し、修正し、結果につなげていく力は、リーグを制した原動力だ。
積み上げた勝ち点83、総得点88、そして勝利数26はともに歴代最多。失点も31と1試合平均で1失点以下。攻守両面で強さを発揮し、記録面でも圧倒的な数字を残した。途中出場の選手がゲームを動かしてみせる層の厚さも誇り、川崎Fは改めて黄金時代の幕開けを感じさせて、リーグ戦を締めくくった。
現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE