上写真=古巣の浦和との一戦で躍動した岡本(写真◎J.LEAGUE)
■2020年12月12日 J1リーグ第32節(@埼スタ:観衆14,847人)
浦和 0-0 湘南
「僕たちらしく最後まで戦えた」
すっかり変貌した。湘南ベルマーレで主将を務め、右サイドを豪胆に駆け上がっていく。マンマークに強い根っからのDFだった岡本拓也は、いまやサイドアタッカーと言ったほうがしっくりくる。埼玉スタジアムで、思わず目を丸くした浦和レッズのファン・サポーターもいたのではないか。
浦和から湘南に移籍して5年が経過した。約3年間の期限付き期間を経て、2019年に完全移籍。浦和のアカデミーで育った28歳も、太い腕に巻く湘南のキャプテンマークが板についてきた。全員の先頭に立ち、仲間を引っ張っている。12月12日の明治安田生命J1リーグ第32節で、浦和の攻撃陣を無失点に抑えて0-0の引き分けに終わった試合後、チームの思いを代弁した。
「僕たちらしく最後まで戦えました。カウンターもできたし、やりたいことはできました。全体のバランスも良かったです。あとは点を決めるところだけ」
自らのプレーもあらためて見つめ直していた。右サイドで起点を作っていたものの、クロスボールの精度を欠いてしまった。レシーバーとのコンビネーションには改善の余地があり、練習から連係を深めていくつもりだ。
ただ、カットインは大きな可能性を感じさせた。勢い良くドリブルで切り込むと、素早く左足を振り抜く。一連のプレーには迫力があり、湘南での進化の跡が見られる。アグレッシブに仕掛け、ゴールにつなげるプレーも増えている。今季はキャリアハイの4ゴール4アシストをマーク。湘南に来たからこそ殻を破れたという。昨年のある日、練習場でふと話していた。
「昔は自分の限界を自分で決めていましたが、湘南に来て僕は変わりました。何事もチャレンジしてみないと分かりません。もっともっと成長できると思っています」
まさに言葉通りの成長ぶりだ。伸びしろは、まだたっぷりある。今季チームは下位に沈んでいるものの、未来は暗くないはずだ。進化する湘南スタイルは、形として見えてきた。主将の岡本も、クラブとともにさらなる高みを目指していく。
現地取材◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE