上写真=今季はここまで28試合に出場している旗手怜央(写真◎Getty Images)
厳しい自己評価が成長を促す
自分自身への評価は、意外なほど厳しいものだった。大卒ルーキーながら、ここまでリーグ戦28試合に出場。5得点を挙げている。プロ1年目にしてチームのリーグ優勝にしっかり貢献したのは間違いない。ただ、旗手本人にとって、それは手放しで喜べるような成績ではないという。
「僕自身、ゴールを決めたり、アシストできたり、こんなに試合に出られるとは思っていなかったので、そこに対しては充実したシーズンを送れたんじゃないかなと思うんですけど、ただやっぱりもっと結果を出して、試合に出たいという気持ちもあります。充実した一方で悔しさもある。そこは半々、です」
手応えはあるものの、反面、『もっとできた』との反省もある。
「夏くらいに、自分ではコンディションもよくて試合に出られる機会も多くなり、プレー時間も長くなりました。でも今は、徐々にですけど出場時間が減ってきているし、結果というのも横浜FC戦以来ゴールを決められていなくて、その意味で悔しさがあります」
7月26日の7節湘南戦で初先発を飾ると、以降9月27日の19節湘南戦まで、2試合先発し1試合は途中出場というペースでプレーし続けた。だが、その後は10月10日の21節仙台戦、11月3日の26節札幌戦に先発したのみ。本人が言うように出場時間を徐々に減らしている。ゴールも9月23日の横浜FC戦以来、ない。
「ゴールを決めたから出場時間が延びるわけではない。チームにプラスな働きができるかできないかだと思います。なのでチームにプラスになる働きができていないとも感じます」
そもそもプラスになる働きができなければ出場機会は得られず、つまりはチームに貢献しているからこそ、コンスタントに試合に出ているはずだが、本人が求めるレベルはあくまで高い。自然、自己評価も厳しくなる。
前節の清水戦では、登里享平が前半早々に腰を痛め、旗手は試合開始直後に途中出場することになった。しかも、未経験の左サイドバックで、である。
「大分戦(28節)で右サイドバックをチラッとやったんですけど、左サイドバックは高校のときか。4バックの左サイドバックは初めてでした。僕自身はそんな形で出るとは思っていなかったので、『できるのかな』と不安はありましたけど、失点に絡まなかったのはよかった。
自分のところでやられなかったのはよかったとは思いますけど、サッカーの理解度が高い人だったらどこでもできると思うので、そういった部分ではサイドバックでも自分の持ち味を出せるようなプレーだったり、頭を使ったプレーができればよかった。そこはできなかったので、悔いが残っています」
不慣れなポジションであっても、自身の理想をしっかり描き、そこに少しでも近づくために力を尽くす。そんな作業を繰り返して、ここまで成長してきたのだろう。
「前節だったら(三笘)薫と縦関係を組んでいたんですけど、薫にいいボールを出せなかったというのは悔いが残っています。自分は攻撃の選手なので、もっとサイドバックの型にはまらないようなプレーをしてもよかったんじゃないかと。この二つは、次の試合に出る機会があるんだったら、チャレンジしたい」
旗手怜央という選手は、どこまでもどん欲だ。