上写真=取材中、中村憲剛に「こういうところでちゃんとしゃべることが大事だからな」とアドバイスを受けて緊張した様子も(写真◎スクリーンショット)
「止めて蹴る」をすごく丁寧に教えてもらって
「うれしい気持ちはあった反面、悔しい気持ちのほうが大きかったですね。自分としては試合に出たらやれる自信ついてきた分、この過密日程の中でも出られなかったのは悔しかったです」
昌平高から加入して2年目で、原田虹輝は初めてのリーグ優勝を経験した。とはいえ、試合には出場していない。同じチームにいながら、やや遠くの出来事としてとらえているかと思いきや、そんなことはなかった。自信があるからこそ、チャンスをつかむ心意気は持ち続けてきて、それがかなわなかったことを悔やむ。
日々のトレーニングで、自分の思い通りにプレーできる回数がどんどん増えている実感があるという。そうやって自信を手にすればするほど、足りないものも見えている。それも含めて、まさに成長曲線の最中にいる。
「去年はボランチで、パスをさばくとかゲームコントロールを意識してきましたが、今年はインサイドハーフで得点やアシストに絡むところは自分としてはまだまだ課題があるので、細かく意識していきたいと思います」
その練習はどれだけレベルが高いのだろうか。
「すごくハイレベルな紅白戦で、11対11で自分が入れないときは外から見ているんですけど、本気で1点にこだわっていますし、3分という短いゲームでも本当に勝負にこだわっているのが外から見ても分かるんです。実際に中に入っても気迫や声で本気度が伝わってきて、それが公式戦にも出ていてすごいなと思いました」
つまり、フィジカルもメンタルも公式戦と同じ強度を紅白戦で再現しているという凄みだ。試合に出ている先輩たちと自分の違いはどこにあると感じているだろうか。
「大きく違うのは判断の速さやラストパスやシュートの精度が細かいところです。そこにも自分はまだまだ課題があるのかなと思います」
その精度の最高峰が、中村憲剛だろう。引退まで残り1カ月となり、20歳年上のボールマスターから少しでも多くを学んでおきたい。
「憲剛さんはポジションも近いので、いろいろ参考にしたりアドバイスをもらったりしています。今年で引退してしまうので、個人としては公式戦で一緒にプレーしたいという思いは強く持っています」
「パス交換をしたいというのもそうですが、一緒のピッチに立つのはサッカー選手としていい経験だと思っていて、そのチャンスはあるので、残りの短い時間を大切にして残り試合でチャンスをつかみたいと思っています」
「去年から、止めて蹴るという基礎的な部分をすごく丁寧に教えてもらっていて、フロンターレの特徴もここ2年で教えてもらいました」
そんな話をしていたら偶然、中村が取材現場に通りかかって、新しいアドバイスをくれた。「こういう場できちんとしゃべることが大事だからな」。中村自身がメディアを始めとした周囲の人たちと数々の「言葉のパス交換」をしてきたからこそのメッセージだった。中村選手、大丈夫です。原田選手はとてもきちんとていねいに話してくれていますよ。
他の選手にも質問攻めにしているという。例えば、同じインサイドハーフの大島僚太にはパスについて。
「確かセレッソ戦だったと思うんですけど、後ろからの浮き球のパスをループで(小林)悠さんに出したシーンがあったんです。いつ悠さんのことを見ていたんですか、と聞いたら、見ていなくて、受け手の特徴を考えて出したんだよ、と。(レアンドロ)ダミアンならば足元のパスが好きなのであの浮き球のパスは出さない、悠さんは裏に抜けてくれるからあの浮き球で、と特徴を理解して出していると聞いて、僕も悠さんだったら、ダミアンだったら、(宮代)大聖だったら、と考えて出せるように頑張っていきたいです」
毎日のすべての時間が学びであり、でも公式戦に出なければ意味がないことも分かっている。ここまでの2年で蓄えた自信を胸に、デビューのその時が待ち遠しい。