上写真=柏レイソル戦で逆転ゴールをスコアした石原直樹(左/写真◎Getty Images)
■2020年10月18日明治安田生命J1リーグ第23節(@BMWス)
湘南 3-2 柏
得点:(湘)岡本拓也、松田天馬、石原直樹
(柏)オルンガ、神谷優太
ゴールは狙っていましたけど…
歴戦のFWは、冷静だった。
「タリク選手がニアで(相手を)釣ってくれて、僕の後ろにも味方が1人いるのが分かったので、微妙なポジションを取りました。良いクロスが上がってきたので、キーパーの位置も確認できて、あとは枠に入れるだけでした」
同点で迎えた81分の場面を、淡々と振り返る。
78分に追いつき、スタジアムの熱気が高まっていた。ボールがサイドに展開されると、石原直はファーサイドからタイミングを計りながらゴール前へ。岡本拓也のクロスがタリクと柏DFを越えた先で、気負いのない様子で体を倒しながら丁寧に頭で合わせ、逆転のゴールを決めた。
今季、湘南に12年ぶりに戻り、いきなりリーグ開幕戦でゴールを決めた。現時点で2020年シーズンのチーム最多得点者でもある。
だが、最初から定位置が約束されていたわけではない。先発の機会を増やしたのは酷暑の夏場。36歳となった翌日、8月15日の第10節・横浜FC戦から10試合連続で先発した。いつの間にか、出場試合数はチーム最多タイとなっている。
そしてこの日は、ついにJ1通算300試合出場を達成。チーム最年長でもあるが、ボールを呼び込む動き出し、あるいは下がって受けて始めるドリブル、さらに守備と、年齢を感じさせない動きを見せていた。
「300試合だったので、もちろん試合前はゴールを狙っていました。実際にゲームに入ってからは余裕はなく、そのことは忘れていました」
サッカーと勝利に向ける情熱が、石原直を突き動かすのだろう。
久々の勝利に「ほっとしている」と話すが、あえて一歩ずつ実直に進むつもりだ。
「(チームは)すぐには変わっていかないけど、方向性や何をすべきかを、また一人ひとりが分かったと思うので、ちょっとずつ成長していけるのかなあと思います」
プロ入りから6年間は湘南でJ2暮らしだったが、その後はJ1の4クラブを渡り歩き、リーグ優勝も経験した。そうして復帰した湘南で、節目のゲームに自ら祝砲をあげる姿は、日々の積み重ねの重要性を物語っている。