明治安田生命J1リーグ第23節で、川崎フロンターレは名古屋グランパスを迎える。連勝を10で止められた相手と、2度目の10連勝を達成したいま、再び戦うめぐり合わせ。前回、逸機と黒星という二つの悔しさを味わった守田英正はリベンジを誓う。

上写真=守田はキャプテンマークも様になる。次はゴールを!(写真◎J.LEAGUE)

最後は個。そこで勝てさえすれば

 きっかけは、8月23日だった。

 J1第12節の名古屋グランパス戦で0-1。今季初黒星を喫した。10連勝の記録を作った次の試合での敗戦はしかし、新しい進化を促したのだと守田英正は振り返る。

「2ボランチ気味にして穴を開けないことを始めたきっかけの試合でした。結局それが、自分たちの守備の勢いが出ない要因になってしまって、半信半疑のまま守備をすることにつながったのですが、そこで反省して、勢いをもたらすために『こういうときには誰が出ていって』という理詰めの話がそこをきっかけにできたんです。だからいま、うまくいっているんじゃないかなと思います」

 アンカーを置くフォーメーションであれば最終ラインの前に1人構えて、他の選手はその前で積極的に奪える。でも、アンカーの脇のスペースを狙われるデメリットもある。それを解消しようとしてボランチを2人並べると、今度はその分、前で奪う人数が減ってしまう。その微調整の時期だった、というわけだ。23試合で65ゴール、1試合平均でおよそ2.83得点という驚異的なゴールラッシュが称賛の的になるが、それを下支えする守備にもそんな構築の経緯があった。

「守備でボランチ2枚でどしっと構えながら前からはめに行こうとすると、勢いが出なくなったり、相手もこちらの出方を見てビルドアップに1枚増やしてきたときにどうするかという対応は難しいんです。でも、前回名古屋戦で負けたときよりもいまははるかに守備が安定していると思います」

 進化の手応えが確かにある。そこには、根底にある守備の哲学への変化も含まれるかもしれない。変化、というよりは、根本に戻った、というべきか。

「後ろをちょっとコンパクトにしているところはあって、たまに2枚のセンターバックがフォワード2枚にマンツーマンのようについてカバーに回れないところがあります。でも、最後は個だと思うのでそこで勝てさえすれば問題ないです。カバーが絶対にいなきゃいけない、という部分の意識が変わってきているんじゃないかな」

 カバーに回る選手がいればリスクは減るものの、代わりに別のところに穴ができる危険性も同時にはらむ。だが、1対1で負けなければ、その心配はいらない。目の前の相手に勝つという守備の基本に立ち返ることにもつながった。

 守田はアンカーとして守備の整備の中心人物となるが、攻撃に転じるスイッチ役としても機能しなければならない。その部分でも微調整は試合ごとに加えられている。例えば、第21節ベガルタ仙台戦で1-0と苦しんだことを受けて、続くサンフレッチェ広島戦では改めて「見る」ことの重要性を意識に植え付けた。

「違いがあったのは、ランニングをかけた選手を見て出すか出さないの選択をできたのかできていないのかの差だと思います。仙台のときはもちろん決めきれさえすれば楽だったかもしれないですけど、チャンスを作るに当たってランニングをかけたり強い動きをした選手も見えていなかったり出すまでに至らなかったことがあって、それは後ろの選手も含めて、例えばセンターバックがウイングの強い動きを見ていなかったということもミーティングで話が出ました」

 見えていて出す、見えていて出さない、見えていなくて出す、見えていなくて出さない。4つのフェーズで後者の二つはあってはいけなくて、前者の二つを求めていこうという意思統一だった。細かいことを積み上げる作業は、どんなに勝っていようとも止まることはない。

 前回の名古屋戦では開始5分の決定機を逃していて、負けたのは自分のせいだと悔やんだ

「自分と似たようなタイプ、ディフェンシブで守備に特徴があってという選手は他のクラブにもたくさんいるんですけど、そういう選手も点を取るときに取ってるんですよね。名古屋で言えば稲垣(祥)選手、ガンバでは井手口(陽介)選手で、狙って決めるところで決めてチームを勝たせています。それは自分にないものなので、そこを目指していかなければいけないと思っています。自分がもっといい選手になるには、外せない部分。まだ点は取れてないですけど(笑)、そこに意識を置きながらプレーしています」

 逸機と黒星の二つのリベンジを、ぜひ自らのゴールで!


This article is a sponsored article by
''.