10月14日、明治安田生命J1リーグ第22節が開催された。味の素スタジアムではFC東京と清水エスパルスが対戦。前半は持ち前のアグレッシブさを出せなかったFC東京だが、先制に成功すると、後半に2点を追加して勝利を飾った。

上写真=2点目を挙げた永井(左)と先制点を『アシスト』した三田(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月14日 J1リーグ第22節(観衆3,812人/@味の素)
FC東京 3-1 清水
得点:(F)田川亨介、永井謙佑、アダイウトン
   (清)ジュニオール・ドゥトラ

・FC東京メンバー◎GK林彰洋、DF中村拓海(84分:中村帆高)、森重真人、ジョアン・オマリ、小川諒也、MF三田啓貴(69分:内田宅哉)、高萩洋次郎、安部柊斗、FW永井謙佑(69分:アダイウトン)、ディエゴ・オリヴェイラ(90分:原大智)、田川亨介(69分:アルトゥール・シルバ)

・清水メンバー◎GK梅田透吾、DFヴァウド、六平光成、ヘナト・アウグスト、MF奥井諒、鈴木唯人(73分:成岡輝瑠)、西村恭史、金子翔太(62分:後藤優介)、西澤健太、FWジュニオール・ドゥトラ、カルリーニョス・ジュニオ

5試合ぶりの複数得点

 FC東京が苦しいながらも要所で地力を発揮して勝ち点3を積み上げた。長谷川健太監督によれば、「褒められた内容ではない」というゲーム中で堅守と個性をピッチで示した。

 ことさら鋭利なカウンターがクローズアップされがちなFC東京だが、セットプレーからの得点もここまで15ゴールと多い。先制点もそのセットプレーの流れから「個」の特長を生かして奪った。前半22分、ピッチ中央やや左で得たFKの場面。三田が左足で蹴ったボールは壁に当たってこぼれるが、すぐさま高萩が拾って、右サイドの中村拓に展開。戻されたボールを高萩がダイレクトでボックス内へ送り込んだ。

 清水のGK梅田が前に出てパンチングで弾くと、ボックス左で待っていた永井が拾って、これまたダイレクトで中央へ折り返す。体勢が整っていなかったGK梅田がファンブル。CB六平の倒れ込みながらのクリアも体勢が悪く、ボックスのすぐ外までしかボールは飛ばなかった。

 クリアボールの落下地点で待っていたのが、一連のプレーの出発となるFKを蹴った三田だった。左足のボレーで叩きつけたシュートはゴールの枠をしっかりととらえる。ボールはGK正面に向かったが、コース上にいた田川がまたぐようにジャンプ。わずかに当たってコースが変わり、ボールはゴールに吸い込まれた。

 まず、高萩がダイレクトでボールを入れたことで清水守備陣の準備が遅れている。そして永井もダイレクトで折り返したことで、清水の選手たちに体勢を立て直す時間を与えなかった。2人の状況判断が光ったプレー。さらにゴールは記録上、田川のものになったが、クリアボールの落下地点に素早く動き、正確にボールをとらえた三田のキックスキルも見事だった。

 先制したFC東京は強い。点を取るために前に出ざるを得ない相手に対してカウンターを仕掛けやすくなるからだ。一方で、先制された清水は苦しい。ここまで先行された試合をことごとく落としている。前回の連敗を「7」で止めた湘南戦は先制してリズムが良くなり勝利を手にした。だが、その7連敗も湘南戦以降の4連敗も、すべて先制を許していた。

 FC東京は前半、清水にボールを持たれることになったが、それでも先制し、後半は狙い通りに試合を進めていった。55分には一人のFWが個の力でネットを揺らす。小川のスルーパスに反応してボックス内に進入した永井が対面する清水DFヴァウドをボディーフェイントで揺さぶり、空いたニアサイドにシュートを叩き込んだ。ボックス左に向かって斜めに走り込み、ボールを収めるや反時計回りに反転。ヴァウドがファーサイドへのシュートを警戒して重心を左に移した瞬間を見逃さなかった。

 2-0としたFC東京はしかし、79分にエアポケットに入ったように緩慢なプレーをしてしまう。GK林が相手FWドゥトラにボール渡すというミスを犯し、失点。1点差に詰め寄られた。

 ここでFC東京は手綱を締め直す。ズルズルと悪い流れにすることはなかった。疲れの見える選手を交代させながら、逃げ切りではなく3点目を目指す。そしてアディショナルタイムに、途中出場の原が左サイドを抜けてロークロスを入れ、アダイウトンが詰めてネットを揺らした。逃げ切りではなく、突き放すことを選択し、見事にやってのけたのだ。ミスによる嫌な雰囲気を払しょくし、5試合ぶりの複数得点を記録。開幕戦で清水とまみえたときと同じ、3-1でゲームを終えた。

「ホームで勝てたのは非常に大きな結果。特に前半はなかなかスイッチが入らず、出足の悪い45分間だったと思います。いい形で先制できたという部分が唯一、良かった点。後半、持ち直した部分はあると思いますが、90分を通して今日の出来は褒められものではない。ただ、悪いなりにしっかりと勝ち点を取れたというのは、選手たちがよく戦ってくれたと思います」(長谷川健太監督)

 内容が悪くても勝ち切る力があるか、ないか。長いリーグ戦を戦う上では、それは極めて重要な要素だろう。この日のFC東京は、その力をしっかり備えていた。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE


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