明治安田生命J1リーグのビッグゲームがやってくる。10月3日のセレッソ大阪対川崎フロンターレ。堅守と猛攻のせめぎ合いは注目度満点だ。話題のルーキーの一人、旗手怜央はそんな大切なゲーム に向けて攻撃の整理はできていると言う。

上写真=ウイングでもインサイドハーフでも。1年目で攻撃の軸になった(写真◎Getty Images)

「ゴール前で仕事がしたい」からこその感謝

 川崎フロンターレで話題の大卒ルーキーの一人、旗手怜央がますます意気盛んだ。

 リーグ戦でいえば2月の開幕戦から交代で出番をつかみ、7月26日の第7節湘南ベルマーレ戦でリーグ初先発を果たしてから、コンスタントに先発出場を重ねてその数10試合。途中交代も計9試合で、ゴールも5つをマークしている。

 オンライン取材に登場した10月1日はちょうど日本代表のメンバーが発表された日。今回は海外のクラブに所属している選手が選ばれているが、同世代の東京オリンピック組も多く入っていて、これまで共闘してきた彼らへのライバル心をつい聞きたくなる。

「まだ誰が入ったか見ていないんですよね。あんまり興味がないというとおかしいですけど、やるべきことをやらないと同じ舞台に立てないと思っているんです。持っているものをすべてこのチームで出して結果を残さないと入れません。だから、自分のやるべきことをしっかりやることにフォーカスするだけです」

 こちらのささやかな質問に真摯に答える姿が清々しい。自分にフォーカス、という意味では、次節のセレッソ大阪戦が10月3日に迫っている。首位の川崎Fにとってみれば、暫定2位で追いかけてくるこのチームは「目の下のたんこぶ」。現在勝ち点差は11あるので、ここでしっかり勝っておけば差は14に広がる。逆に負ければ8に縮まって、相手が勢いづくのは明らかだ。

 横浜FC戦では3-2、湘南ベルマーレ戦は1-0と、ここ2試合は勝利は収めているもののどちらも1点差。大量得点差が代名詞の今年の川崎Fにしては珍しい。

「自分たちが首位に立てる限り、研究されるのは普通のこと。そこをチームとしてどう崩していくか、決めていくかは今後もっと話し合っていかない部分だと思います」

 対策を施されるのは首位の証明。そう胸を張っている。では、次のC大阪戦はどう戦うだろう。

「特にセレッソをずっと見ているわけではありませんが、真ん中を締めてきて割らせてくれないイメージがあります。そこをどう攻略していけるかがカギになってきます。自分の中で整理できていることはたくさんあります」

 チームの一員として実行する「すべきこと」が最優先だが、それだけでは川崎Fのような魅力的な攻撃は生まれないだろう。だから、旗手怜央という一人のストライカーが「できること」が表現できれば、さらに攻撃の幅も深みも出るはずだ。真ん中を締められれば締められるほど、燃えるのではないだろうか。

「個人で打開できるほど簡単なものではないと思うので、そこは味方をうまく使いながら崩していきたいという気持ちは強いです」

 使いながら、があれば、使われながら、もある。その関係性に大きな感謝を抱いている。

「攻撃の組み立ての部分でかかわりたくないというか、ゴール前で仕事がしたい選手なので、そこまで持ってきてくれるのは安心しますし、いいボールをくれて感謝しています。だからこそ、決めないといけないんです。本当にたくさんの部分でチームメートに感謝しています」

 ルーキーイヤーはここまで順調。でも、だからこそ見上げる世界は広がるばかりだ。その聡明さをもって、これからの自分に課しているものをこう話す。

「課題はたくさんありますし、自分に課しているものはあります。でも、人には言っていないので、ごめんなさい、この場で言えないです。申し訳ないです」

 それだけ、自分に与えた目標に本気なのだと分かる。

 ごめんなさい。申し訳ないです。はにかみながら2度も謝る気遣いの人。だからきっと、仲間からボールが巡ってくるのだ。


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