上写真=カズを取り囲む川崎Fの選手たち。横浜FCのベテラントリオに注目が集まった(写真◎J.LEAGUE)
■2020年9月23日 J1リーグ第18節(@等々力:観衆4,723人)
川崎F 3-2 横浜FC
得点:(川)田中碧、旗手怜央2
(横)小林友希、佐藤謙介
「しつこくビルドアップして」
横浜FCを主語にして試合を振り返れば、まさに下平隆宏監督の言う通りだろう。
「ゲームとしてはいろいろな選手が出場した中で、追い詰めるところまではいけたのではないかと思います。勝ち点は詰めなかったけれど、内容としては十分やってくれたと思います。自信になりました」
いろいろな選手、とは、三浦知良、中村俊輔、松井大輔という、横浜FCが誇るレジェンド級の3人のこと。下平監督が彼らを同時起用したのは、「ターンオーバーということもあった」のも事実だとしながら、「フロンターレの攻撃を受けるときついと思うので、攻撃の時間を長くするためにしつこくビルドアップして、前半をしのげれば」という狙いがあったからだった。だから技術のある3人の同時期ように踏み切ったのだ。確かにGKからしつようにボールを動かし、川崎Fのプレスを角度をつけたパスを連続させてうまく外しながら、かといって強引に前に運ばずに時間をじっくり使いながら攻めていった。
ただ、試合巧者はやはり川崎Fの方。横浜FCのボール回しに無理に食いつかず、落ち着いて構えていった。すると22分に中村憲剛の左CKから中央で山村和也が蹴り上げたボールを、ゴール左で巧みに体を使ってボールを収めた田中碧が鋭くシュートして、逆サイドに沈めて先制した。後半開始早々にも高い位置で相手パスをカットした守田英正のパスを小林悠がワンタッチで落とし、旗手怜央がこちらもワンタッチで流し込んで2-0。川崎Fお得意の後半のゴールラッシュの始まりかと思わせた。
試合が面白くなったのは、さらにこの2分後の48分に横浜FCが1点を返したから。左からの中村俊輔のCKに中央で小林友希が背中に当てて押し込んで2-1とすると、横浜FCに追い上げの機運が高まる。56分にカズから斉藤光毅へ、60分に中村俊輔からレアンドロ・ドミンゲス、松井大輔から手塚康平に代えると、さらに攻撃の意識を高めていって川崎Fに臆することなく向かっていった。
悔やまれるのは66分のビッグチャンスで、レアンドロ・ドミンゲスの短いスルーパスに瀬沼優司が抜け出したシーン。GKと1対1になったがシュートは弾かれてしまったが、この1分後に川崎Fに追加点を奪われたからなおさらだった。その67分に川崎Fが三笘薫のポストプレーから小林、旗手と渡り、そのままドリブルシュートを決めて3-1とした。
それでも攻め続けたのは横浜FCの迷いなき意地だった。74分にレアンドロ・ドミンゲスの横パスを佐藤謙介が素晴らしいミドルシュートで叩き込んで3-2と追い詰め、その直後にもレアンドロ・ドミンゲスが強烈なミドルシュート、またもレアンドロ・ドミンゲスのパスから斉藤がゴール前で完全にフリーになった81分のチャンスなどを迎えるが、ことごとくゴールにはならなかった。
川崎Fからすれば、結果的には終盤に押し込まれた試合ではあったが、しっかりと勝ちきるあたりはさすがの貫録。鬼木達監督は「ボールをしっかりと動かすこと、それから丁寧にやるところとチャレンジしてやり切るところの使い分けができなかった」と反省したが、「難しいゲームに勝ち切れたところは選手を褒めたい」と苦しいながらも勝ち点を手にしたことを称えた。
横浜FCは勝ち点こそ奪えなかったが、川崎Fを相手に渡り合ったことへの自信は、もしかしたら勝ち点と同じぐらいの価値を持ったかもしれない。
写真◎J.LEAGUE