誰しも、吉田豊の豊富な運動量とパワーに驚いたことがあるだろう。明治安田生命J1リーグで折り返しを迎える名古屋グランパスで、仲間のために数的不利を引き受ける背番号23の覚悟が、あまりにも頼もしい。

上写真=いつでもどこでもファイトする。頼りになる男だ(写真◎Getty Images)

「取ったあとにエネルギーを」

 実はサイドバックというのは難儀な商売で、多くのチームがそこに狙いを定めてボールを強奪しに向かってくる。コースを切りながら外に追い込み、サイドバックに入ったら一気に圧をかけることが基本だからで、しかもできるだけゴールに近いところで奪えばショートカウンターを発動できるから、自ずとサイドバックが標的になりやすい。

 そうなると、サイドバックにも相応の技術と忍耐力が求められることになり、吉田豊のような選手が適任になるというわけだ。

 左でも右でもプレーできるのは、ボールを簡単に失わない技量があるから。しかも、フィジカルには自信があって、相手のパワーを受け止める忍耐力も抜群だ。

「サイドバックにボールが入ったときに、取りどころとしてどのチームも狙いをそこに置くというのが基本にあるので、どんなチームにも狙われますね。だから、常にいろんな選択肢を持って臨んでいます」

 サイドハーフへの縦へのパスも、FWへの斜め前のパスも、ボランチやセンターバックへの横パスや後ろへのパスも、あるいはドリブルでも、常に最善策を選べるようなボールの持ち方ができるのは、やはりテクニックのなせる業だろう。

 高速サイドアタックは名古屋の魅力だから、目の前にいるサイドハーフをできるだけ押し上げて、高い位置でその武器を生かせるようにしてあげたい、という思いも強い。下がってこなくてもいいよ、守備はなんとかするから、という意識を持てるのも、忍耐力の表れだ。

「試合状況にもよりますけど、僕が守備で中に絞ったときに前の選手をサイドバックのところまで落とさざるを得ない場面もあります。そこの意思統一はできています。でも僕が考えているのは、なるべく下げないで僕が1対2で守れる状況であれば下がってこないようにしてもらうこと。取ったあとにエネルギーを使えるようなポジション取りができるように声をかけています」

 味方が気持ちよくプレーできるためなら、数的不利も何のその。実際に1人で2人を無力化できる、守備の技術に対する自信の表れだ。

「前節(ヴィッセル神戸戦)は失点しても逆転して勝つ力があるところを見せることができました(2−1で勝利)。この前半戦でそういう力があると分かったのは自信になります。でもそういう中でも、前回のガンバ戦のように最後に決められてしまうこともありました。後半戦に向けてスキを見せないように、自分たちのミスで失点してしまうところを改善できれば、もっと勝ちがついてくると思います」

 その前回のガンバ大阪戦とは7月8日の第3節のこと。先制されたものの逆転し、2-1でアディショナルタイムに入ったところで、90+2分に決められて追いつかれてしまった。次の水曜日がそのG大阪戦だ。7月からの成長と前半戦で手にした「逆転力」を示して、チームの足元をしっかり固められるかが試される90分になりそうだ。


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